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2024年11月18日

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令和6年9月の建設業受注額が21.3%減、民間分野の需要低迷が影響

令和6年9月の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)結果(国交省)

建設工事受注動態統計調査(令和6年9月)のデータに基づき、日本の建設業界における主要な受注状況と動向について概説します。この調査は、建設業大手50社を対象に、建設工事受注の内訳や動向を月ごとに詳述するもので、政府統計の一環として公表されており、企業や業界関係者にとっての重要な情報源となっています。令和6年9月の総受注額は約1兆6,514億円となり、前年同月比で21.3%の減少が確認され、3ヶ月ぶりに減少に転じました。特に民間の受注額が減少したことが影響しており、国内総計も前年同月比18.3%の減少を記録しました。

令和6年9月の民間工事受注額は約1兆1,835億円で、前年同月比23.6%減少し、2ヶ月連続でのマイナス成長となりました。業種別に見ると、製造業からの受注が21.8%増加した一方で、非製造業は32.8%の大幅な減少が見られました。製造業分野では特に情報通信業やサービス業などの成長が顕著で、不動産業、運輸業、金融・保険業といった非製造業の受注が低迷しています。また、工事の種類別にみると、建築工事は全体的に減少した一方で、土木工事の需要は増加し、特に工場や発電所、倉庫・流通施設、教育・研究施設などが増加傾向にあります。反対に、事務所や庁舎、宿泊施設の需要は減少しており、非製造業分野における受注の不振が大きく影響しています。

公共工事についても注目すべき変化が見られました。令和6年9月の公共工事受注額は4,410億円で、前年同月比1.6%増加しており、2ヶ月連続でプラス成長を維持しています。公共工事の分野では、特に国の機関による発注が顕著に増加し、44.8%の伸びを記録しました。一方、地方の機関による発注は前年同月比53.8%の減少となっており、都道府県の増加がある一方で、市区町村や地方公営企業の発注が減少傾向にあることがわかります。工事種類別では、公共の建築工事は減少しているものの、土木工事は道路や治山・治水等の分野で増加しており、地域インフラの維持と改善に向けた需要が続いていることが示されています。

海外工事の動向についても報告があり、令和6年9月の海外工事受注額は200億円の減少となり、3ヶ月ぶりのマイナス成長を記録しました。海外工事においては、現地法人分を含まないため、国際的な受注の変動は大きく影響を受けやすい状況にあります。これは、グローバルな経済状況や海外市場の需要変動に左右されるため、国内受注と異なるリスク要因を抱えているといえるでしょう。

さらに、時系列的な分析によれば、近年の建設工事受注動態には明確な季節性や業種ごとの需要変動がみられます。令和5年度の受注高は前年度比8.8%の増加を記録しましたが、令和6年に入ってからの変動はやや不安定な傾向にあります。具体的には、今年度第2四半期(4月から6月)の受注高は前年同期比で減少し、令和6年7月から9月の受注額は前年同期比6.5%増加するも、9月単月では前年同月比21.3%の減少に転じました。このような変動は、特に国内外の経済環境や政策の影響を受けることが多く、建設業界全体としての需要の安定性が課題となっています。

また、施工高および手持ち工事高についても調査が行われています。令和6年9月末時点での手持ち工事高は約2兆3,297億円で、施工高の合計は1,254,220百万円でした。手持ち工事の月数は平均して17ヶ月分で、特に建築工事における手持ちが厚く、施工需要が安定していることが示されています。しかし、民間工事では前年同月比22.5%の減少が見られ、特に不動産業や金融業における需要の落ち込みが影響しています。このような手持ち工事高の変動は、企業の中長期的な受注計画にも影響を与え、特に地方経済やインフラ維持のための公共工事需要の増加が期待される分野となっています。

建設工事受注動態統計調査の結果から浮かび上がるのは、業種ごとの受注の波が国内市場全体に影響を与えているという現状です。不動産業や金融業などの低迷により、建設業界全体が影響を受ける一方で、製造業からの受注増加や公共工事の需要の安定が業界を支える重要な要素となっています。特に、インフラ整備や地域活性化を目指す公共事業において、今後の発展が期待されます。公共のインフラ整備に関連した事業が一定の安定性を持つ一方、民間分野での変動が企業の経営戦略に直接影響を与えるため、建設業界においてはバランスの取れた受注ポートフォリオが重要です。これにより、企業は市場変動に強く、安定した収益確保が可能になるでしょう。

業界全体としては、公共工事における地方からの受注増加が目指され、各都道府県レベルでのプロジェクトの推進が必要とされています。今後も不動産市場の低迷が続く中で、民間受注の拡大を目指すためには、新たな需要分野の開拓が鍵となります。建設業界は環境整備、DX化(デジタルトランスフォーメーション)、さらには持続可能な開発目標(SDGs)に基づくプロジェクトに関心が高まっており、特に情報通信インフラやエネルギー関連施設の受注が期待されています。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

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