2024年10月29日
労務・人事ニュース
令和6年9月の有効求人倍率が1.24倍に、業界別動向から見る採用トレンド
一般職業紹介状況(令和6年9月分)について(厚労省)
令和6年9月の一般職業紹介状況のデータによると、有効求人倍率は1.24倍となり、前月からわずかに0.01ポイント上昇しました。新規求人倍率は2.22倍で、前月に比べ0.10ポイント低下しています。これらの数値は、季節調整が行われたものであり、経済活動の動きや求人の動向を示す重要な指標です。正社員の有効求人倍率も同様に1.01倍と、前月とほぼ同じ水準にとどまっています。
9月の新規求人は前年同月と比較して5.9%の減少を記録しています。産業別にみると、情報通信業は8.9%の増加を示し、引き続き求人需要が高いことが分かります。一方で、生活関連サービス業、娯楽業では13.3%の減少、製造業でも9.1%の減少が確認され、業界間での需要の差が鮮明になっています。
地域別の求人状況をみると、都道府県別では福井県が最も高い有効求人倍率を示しており、1.93倍となっています。一方で、最低は大阪府と福岡県で1.05倍でした。こうした地域間の差は、産業構造の違いや地域経済の活発度を反映しており、特に地方部における雇用の安定化と求人増加が引き続き課題となっています。
求人倍率や就職件数の推移からも分かるように、令和6年9月の月間有効求人数は、前月に比べてわずかに0.1%増加しましたが、求職者数は逆に0.1%減少しています。これにより、求人倍率が上昇する結果となっています。新規求職申込件数も前年同月比で2.5%の減少が見られ、新規求人数も5.9%減少しています。このことは、求職活動における積極性がやや減少傾向にあることを示しており、労働市場における動向が慎重になっていることが伺えます。
9月の就職件数は97,982件で、前年同月に比べて8.3%の減少を記録しています。就職率も25.7%と低下傾向にあり、充足率も11.1%と前月よりわずかに減少しています。こうしたデータは、企業の採用意欲がやや落ち着きつつある一方で、求職者の側でも慎重な行動が見られることを示唆しています。
産業別の動向を詳しく見ると、情報通信業では8.9%の求人増加が見られ、IT関連の分野で引き続き人材需要が高まっていることが分かります。特に、情報サービス業においては、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、専門技術を持つ人材の需要が顕著です。一方、製造業では9.1%の減少が続いており、特に自動車関連部門や電機製造部門での求人減少が目立っています。これは、世界的な供給網の混乱やコスト増加などの要因が影響している可能性があります。
さらに、宿泊業や飲食サービス業でも求人が減少しており、特に飲食店における求人は前年同月比で23.8%減少しています。これは、人手不足の影響や、コロナ禍からの回復が遅れている業界の一部であることが反映されています。また、医療・福祉分野では、求人全体としては4.5%の減少が見られますが、これは一部の分野における需要が高まりつつも、全体としての労働市場における安定化が進んでいるためと考えられます。
地域別の雇用状況に目を向けると、福井県や福岡県、大阪府などの都市部では求人倍率が高止まりしている一方で、地方部では依然として労働力不足が深刻な状況が続いています。これに対して、政府は各地域の雇用対策を強化し、特に地方での労働力確保や雇用創出に向けた施策を進めています。企業側としても、地域ごとの人材需要や労働環境の変化に応じた柔軟な採用戦略が求められている状況です。
特に、正社員の有効求人倍率が1.01倍と安定していることから、今後も長期的な視点での人材確保が重要となるでしょう。これにより、企業が求める人材と求職者のスキルマッチングが一層求められ、特に専門技術を有する人材の確保が競争の焦点となることが予想されます。
企業の採用戦略においては、こうした求人倍率や産業別の動向を十分に把握し、時流に乗った採用活動を展開することが重要です。また、リモートワークやフレックスタイム制度の導入など、柔軟な働き方を提案することで、優秀な人材を引きつけることができるかもしれません。これからの雇用市場においては、単なる人材の確保にとどまらず、長期的なキャリア形成を支援する企業姿勢が重要視されるでしょう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ