2024年9月30日
労務・人事ニュース
令和6年9月速報値 437人が死亡、全業種での労働災害発生率が2.1%上昇!企業の安全管理強化が急務
令和6年における労働災害発生状況について(9月速報値)(厚労省)
令和6年9月19日に発表された労働災害の発生状況に関する速報データは、企業の安全管理や労働環境改善において重要な指標となります。特に、死亡災害や休業4日以上の死傷者数に関するデータは、企業の採用担当者や安全衛生担当者にとって重大な関心事項です。ここでは、この報告内容を基に、企業の安全管理の向上に役立つ具体的なデータや傾向を詳しく見ていきます。
まず、死亡災害の全体的な発生状況についてですが、令和6年の時点で437人が死亡しており、これは前年同期と比較して9人増加し、2.1%の増加率を示しています。業種別に見ても、特に建設業において死亡者が多く、137人が死亡しています。これは前年同期比で7.0%の増加、すなわち9人の増加に相当します。また、製造業では82人が死亡しており、こちらは前年同期と比較してわずかに減少(1.2%減少、1人減少)しています。これに対して、林業では前年と同じ19人の死亡者が報告され、増減はありませんでした。陸上貨物運送業では67人が死亡しており、こちらは4人増加、6.3%の増加率となっています。第三次産業では109人が死亡しており、前年同期比で1.9%増加しています。これらの数字から、特に建設業や陸上貨物運送業など、肉体的な労働を伴う業種において、死亡災害が増加していることが明らかです。
次に、事故の型別に見た死亡災害の発生状況について考察します。墜落・転落による死亡者数は114人で、前年同期と比較して6人増加し、5.6%の増加率を記録しています。このデータは、高所作業を行う現場での安全対策が依然として課題であることを示しています。また、はさまれ・巻き込まれによる死亡者数は74人で、こちらは前年同期比で4人減少しており、5.1%の減少率となっています。交通事故による死亡者数は66人で、こちらは前年同期比で20人減少、23.3%の減少を見せています。このように、一部の事故の型においては改善の兆しが見られる一方で、依然として高所作業や交通事故に関連した安全対策が十分に行われていない可能性があります。
次に、休業4日以上の死傷者数に目を向けると、全体で77,251人が休業4日以上のけがや病気を負っており、前年同期比で1,120人増加、1.5%の増加率を記録しています。業種別では、製造業で15,609人が休業4日以上の死傷者となっており、前年同期比でわずかに11人の増加(0.1%増加)となっています。建設業では7,991人が報告されており、こちらは前年同期比で228人減少、2.8%の減少率を示しています。陸上貨物運送業では9,660人が報告されており、前年同期比で1.8%の増加、すなわち172人の増加です。第三次産業においては39,435人が報告されており、前年同期比で3.0%増加、1,139人の増加となっています。
事故の型別に見ても興味深い傾向が見られます。転倒による死傷者数は20,880人で、前年同期比で190人増加し、0.9%の増加率を示しています。これは、特に職場での歩行や移動時に発生する事故が依然として多いことを示しており、床面の安全管理や適切な靴の選択が安全対策として重要であることがわかります。また、動作の反動や無理な動作による死傷者数は11,967人で、前年同期比で283人増加し、2.4%の増加率を記録しています。さらに、墜落・転落による死傷者数は11,873人で、こちらも前年同期比で115人増加、1.0%の増加を見せています。これらのデータからも、高所作業や無理な姿勢での作業が依然として大きなリスクであることが浮き彫りとなっています。
これらのデータを基に、企業の採用担当者や安全衛生担当者が注目すべきポイントは、まず労働災害が増加している業種や作業環境に焦点を当てた安全対策の強化です。特に建設業や陸上貨物運送業においては、死亡災害や重篤なけがが発生しやすい状況が続いており、これらの業種に従事する労働者に対する安全教育の強化や、安全装備の徹底が求められます。また、高所作業や無理な姿勢での作業が原因となる事故が多発していることから、これらの作業に従事する労働者に対する適切な指導や、作業環境の見直しが必要です。さらに、交通事故による死亡者数が減少している一方で、依然として多くの労働者が道路上での作業中に事故に巻き込まれていることから、交通安全教育のさらなる強化が求められます。
以上の情報を基に、企業は採用活動において労働者に対する安全対策の充実をアピールすることが求められます。特に、労働災害のリスクが高い業種においては、採用時に安全教育や作業環境の改善を強調することで、求職者に対して安全な労働環境を提供している企業であるという印象を与えることができるでしょう。また、定期的な安全教育の実施や、安全装備の提供を通じて、従業員の安全意識を高めることが長期的な労働災害防止に繋がります。
最後に、新型コロナウイルス感染症に関連する労働災害の報告が除外されている点も注目すべきです。コロナ禍においても労働環境が大きく変化していることから、今後は新型感染症対策も含めた包括的な安全対策が求められるでしょう。企業がこうした安全対策を強化することで、求職者にとって魅力的な職場となるだけでなく、従業員の定着率向上や労働災害の減少にも繋がることが期待されます。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ