2025年3月5日
労務・人事ニュース
令和6年9月 きまって支給する給与316,549円、企業の給与体系と労働市場の変化を分析(事業所規模30人以上)
毎月勤労統計調査地方調査 令和6年9月分結果概要 事業所規模30人以上 調査産業計(厚労省)
令和6年9月の労働市場に関する詳細な統計データが発表され、事業所規模30人以上の企業を対象とした調査結果が明らかになった。このデータによると、全国の常用労働者数は31,095.8千人に達し、労働市場の安定性が確認された。また、総実労働時間は139.5時間、所定内労働時間は128時間、所定外労働時間(残業時間)は11.5時間となり、労働時間の推移が示された。出勤日数は17.5日となり、労働者の勤務実態の把握に役立つ指標となっている。
労働時間に関するデータを詳しく見ると、所定外労働時間(残業時間)が11.5時間となっており、これは近年の働き方改革や労働時間管理の厳格化による影響を受けている可能性がある。企業の多くが残業の削減に取り組んでいる中で、この数値は一定の成果を示しているものと考えられる。しかし、業種や企業規模によって労働時間のばらつきがあるため、個別のケースを分析することも重要である。
賃金面に関するデータでは、現金給与総額が326,714円、きまって支給する給与は316,549円、所定内給与は292,542円、特別給与(ボーナスなど)は10,165円となった。このデータから、基本給に相当する所定内給与が全体の大部分を占めていることが分かる。特別給与の割合が低いことは、賞与やインセンティブが少ない労働環境が一般的であることを示している可能性がある。
この賃金構造は、企業の給与体系を分析する上で重要な情報となる。特に、給与総額と所定内給与の差を比較することで、企業がどの程度の追加手当を支給しているかを把握することができる。現金給与総額が30万円を超えていることは、労働市場において一定の安定性を示すものと考えられるが、物価の上昇や生活費の変動を考慮すると、労働者の満足度や購買力にどのような影響を与えているかについても分析する必要がある。
企業の採用担当者にとっては、このデータは人材確保や労務管理の戦略を立案する上で極めて重要な情報である。給与水準や労働時間の傾向を理解することで、自社の給与体系を競争力のあるものにし、優秀な人材を確保するための基盤を整えることが求められる。特に、所定内給与と現金給与総額のバランスを考慮し、適切な報酬体系を設計することが、求職者の関心を引くポイントとなる。
また、労働時間の管理が厳格化される中で、企業は従業員のワークライフバランスを考慮しながら、労働生産性を向上させる方法を模索する必要がある。リモートワークやフレックスタイム制の導入、業務の自動化などを活用し、労働時間の削減と生産性の向上を同時に実現することが、今後の企業経営の鍵となるだろう。
さらに、労働者の意識の変化も考慮すべき点である。給与水準が一定以上であっても、労働環境や福利厚生の充実度が重視される傾向が強まっている。企業が柔軟な働き方を提供し、従業員の満足度を向上させることが、採用競争を勝ち抜くための要因となる。
近年の傾向として、企業は単なる給与の引き上げだけでなく、職場環境の改善やキャリアアップの機会を提供することで、より魅力的な職場を形成することに力を入れている。従業員の定着率を向上させるためには、長期的な視点でのキャリア支援やスキル開発のプログラムを充実させることが不可欠である。
このように、令和6年9月の労働市場のデータから、現在の労働環境や賃金水準の実態が浮き彫りになった。企業は今後、給与水準の適正化、労働時間管理の徹底、職場環境の改善を進めながら、持続可能な雇用戦略を構築することが求められる。特に、優秀な人材の確保が企業の競争力を左右する要因となる中で、求職者のニーズに応える柔軟な働き方の導入が重要な課題となるだろう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ