2025年3月5日
労務・人事ニュース
令和6年9月 きまって支給する給与326,597円、企業の給与体系と製造業労働市場の動向を分析(事業所規模5人以上 製造業)
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令和6年9月の労働市場に関する最新の統計データが発表され、特に事業所規模5人以上の製造業における労働状況が詳細に分析された。この統計によると、全国の常用労働者数は7,663.4千人に達し、製造業における雇用の安定性が示された。また、総実労働時間は155.8時間、所定内労働時間は142.3時間、所定外労働時間(残業時間)は13.5時間となっており、製造業における労働時間の推移が確認された。出勤日数は18.7日となり、労働時間と勤務日数の関係が明確になった。
特に、所定外労働時間が13.5時間となっている点は、近年の働き方改革や労働時間管理の厳格化による影響を反映している可能性がある。製造業は他の業種に比べて所定外労働時間が長くなる傾向にあるが、それでも適正な労働時間の確保に向けた取り組みが進んでいることが伺える。これは、生産効率の向上や業務の自動化、デジタル技術の導入による業務改善が影響を与えていると考えられる。
賃金面に関するデータでは、現金給与総額が335,488円、きまって支給する給与は326,597円、所定内給与は296,629円、特別給与(ボーナスなど)は8,891円となった。この統計から、製造業の給与体系が他の業種と比較しても一定の安定性を持っていることが分かる。特に、基本給に相当する所定内給与が高めに設定されており、安定した収入が確保されていることが特徴的である。一方で、特別給与の割合は低く、賞与やインセンティブがあまり大きな比率を占めていないことが伺える。
この賃金構造の分析は、企業の給与体系を設計する上で重要な情報となる。特に、所定内給与と総支給額の差を比較することで、企業がどの程度の追加手当を支給しているかを把握することができる。製造業では労働時間が長くなる傾向があるため、時間外手当の割合が高くなるケースも見られるが、今回の統計では所定内給与の割合が高いことが特徴的である。これは、企業が基本給の引き上げを行い、従業員の生活の安定を図る取り組みを進めていることを示唆している可能性がある。
企業の採用担当者にとって、このデータは人材確保や労務管理の方針を決定する上で非常に重要な指標となる。給与水準や労働時間の傾向を理解することで、競争力のある採用戦略を立案し、労働市場の動向に適応することが求められる。特に、給与水準が一定以上であることが確認されたことで、優秀な人材を確保するためには、単に給与を引き上げるだけでなく、職場環境の改善や福利厚生の充実を進めることがより重要となる。
また、労働時間の管理が厳格化される中で、企業は生産性を向上させるための施策を講じる必要がある。リモートワークの導入が難しい製造業では、業務の効率化や工程の見直し、自動化技術の活用が求められる。特に、労働時間を短縮しながら生産性を向上させるためには、最新の生産管理技術やデジタルツールの活用が不可欠となる。
さらに、労働者の意識の変化も企業が対応すべき重要な課題である。給与水準が一定以上であっても、長時間労働や過度な業務負担がある職場環境では、人材の定着が難しくなる。企業は、労働者のワークライフバランスを重視した柔軟な働き方の導入や、職場環境の改善に取り組むことで、優秀な人材の確保と定着率の向上を図ることが求められる。
また、今後の労働市場では、経験者採用だけでなく未経験者や異業種からの転職者の受け入れも重要なポイントとなる。特に、製造業ではデジタル技術の導入が進んでおり、従来の技能労働者に加えて、ITスキルを持つ人材の確保が求められるようになっている。このため、企業はスキルアップのための教育プログラムを充実させ、新たな人材を確保する取り組みを強化する必要がある。
このように、令和6年9月の製造業の労働市場に関する統計データから、現在の労働環境や賃金水準の実態が明確になった。企業は、給与水準の適正化、労働時間管理の強化、職場環境の改善を進めながら、持続可能な雇用戦略を構築することが求められる。特に、優秀な人材の確保が企業の競争力を左右する要因となる中で、求職者のニーズに対応した柔軟な働き方の導入が鍵となるだろう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ