2024年10月16日
労務・人事ニュース
令和6年9月 近畿地方、物価上昇とインバウンド低迷で企業業績に打撃
景気ウォッチャー調査(令和6年9月調査)― 近畿(現状)―(内閣府)
近畿地方における2024年9月の景気ウォッチャー調査の結果によれば、全体的に見ると様々な業界で堅調な動きが見られますが、インバウンド需要の低迷や物価上昇が企業の業績に影響を与えていることが浮き彫りになっています。特に、小売業やホテル業界では一時の勢いが失われ、販売量や客足に不安定な動きが見られています。
百貨店やスーパーでは、前年に比べ売上が増加している店舗もありますが、インバウンドの低迷や物価上昇の影響を受けているところが多く見受けられます。例えば、ある百貨店では防災備蓄商品や婦人服などが堅調に推移しており、来客数も前年比で約5%増加した一方、インバウンド需要は勢いを失い、円高傾向もこれに拍車をかけています。また、スーパーでは、自然災害に対する特需が一部見られるものの、円安や物価上昇の影響で、特に生鮮食品や日用品に対する慎重な購買行動が目立ちます。
都市型ホテルでは、インバウンドの回復が一部見られ、稼働率は85%と予想を上回る結果となっていますが、レストラン部門では物価上昇の影響で地元客の足が遠のき、全体的な収益の改善には至っていないのが現状です。特に、欧米からのインバウンド需要は高まりを見せていますが、国内需要は思ったほど強くなく、レストラン利用者が減少しています。また、ビジネス客の利用が増加傾向にある一方で、消費者の支出意欲が全体的に低下しており、宿泊業界は今後も厳しい経営環境が続くことが予想されます。
小売業においては、時計や衣料品などの高額商品に対する購買意欲が減少していることが指摘されています。特に9月の猛暑が影響し、消費者が外出を控える傾向が強まり、来客数が減少した店舗が多く見られました。ラグジュアリー系化粧品の売上は前年比5%増となった一方で、ギフト需要が伸び悩み、ボディケアやヘアケア製品の売れ行きが鈍化しています。
また、飲食業界でも物価上昇や気候の影響が経営に大きな負担をかけています。一般レストランでは、インバウンドの客足が増加しているものの、国内の個人消費は依然として厳しい状況にあり、平日の夜間営業は特に苦戦しています。さらに、宴会需要が大幅に減少しており、複数の店舗を回る形式の利用が増えていることから、単価の高い注文が減少しています。
一方、住宅販売や不動産業界においても、物価上昇の影響が深刻化しています。建築資材や労務費の高騰が続く中で、特に都心部以外の郊外物件の販売が停滞しています。郊外のマンションでは、価格が購入可能な上限に達しているため、集客や売上の減少が顕著になっています。また、不動産取引自体が減少傾向にあり、景気の不透明感が強まっています。
製造業においては、食品関連業界や電気機器業界での販売量が減少しています。大型家電製品の販売は前年割れとなっており、半導体関連の業績不振が続いています。特に家電量販店では、エアコンの販売が好調である一方、調理家電の販売が振るわないことが指摘されています。また、地震や台風の影響で防災意識が高まり、ポータブル電源などの需要が増加していることも注目されています。
交通機関や宿泊業においても、自然災害やインバウンドの動きが大きな影響を与えています。観光型旅館では、地震や台風の影響でキャンセルが相次ぎ、団体客の利用が想定以下であったため、売上が伸び悩んでいます。また、タクシー業界では、暑さの影響で一時的に需要が増加したものの、平日の夜間利用が減少しており、業界全体として厳しい状況が続いています。
総じて、近畿地方の景気動向は業界によってばらつきがあるものの、物価上昇や円高、自然災害の影響が全体的な景気にマイナスの影響を与えていることが明らかです。今後も、消費者の節約志向や企業のコスト増加が続く中で、さらなる景気の停滞が懸念されています。
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