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2025年3月1日

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令和7年度建築保全業務労務単価が8.3%引き上げ、全国平均18,002円に

令和7年4月から適用する建築保全業務労務単価について ~対前年度比8.3%の引き上げ~(国交省)

令和7年度の建築保全業務労務単価が発表され、全国の官庁施設における保全業務費の参考基準として示されました。今年度の労務単価は前年と比較して8.3%の引き上げとなり、全国平均で18,002円に達しています。これにより、建築保全業務に従事する技術者や清掃員、警備員などの賃金が大幅に上昇し、安定した労働環境の確保が期待されています。

この労務単価は、各省庁の施設管理者が業務委託費を算出する際の参考として用いられ、建築保全業務共通仕様書および積算基準に基づいて設定されます。毎年度の労務費調査をもとに適正な水準が決定されるため、労働市場の変化を反映しやすい仕組みとなっています。

全国の主要10地区において、保全業務従事者の単価が設定されており、例えば東京都の保全技師Ⅰの単価は28,800円、清掃員Aの単価は21,800円とされています。警備員に関しても同様に職種ごとの単価が定められており、警備員Aは20,600円、警備員Bは17,600円といった水準です。これは前年から7.6%から9.8%の増額となっており、特に清掃員の単価が大幅に上昇しました。

労務単価の構成としては、日割基礎単価、割増基礎単価、宿直単価の3つに分けられます。日割基礎単価は通常勤務時間に基づいた1日8時間当たりの単価を示し、割増基礎単価は時間外労働や深夜勤務に適用される基準です。また、宿直単価は宿直勤務を行う場合の定額料金として定められています。

建築保全業務における労務費の算出方法は、直接人件費、業務管理費、一般管理費、消費税等相当額を合算して決定されます。直接人件費は、各職種ごとの労務単価に労働時間を掛けて算出され、これに業務管理費や一般管理費が加算されることで最終的な業務価格が決まります。

この改定により、建築保全業務に従事する労働者の賃金水準が改善され、より安定した労働環境が整うことが期待されます。特に人材確保が難しい清掃員や警備員の給与引き上げが行われたことで、官庁施設の維持管理における人材不足の解消が図られるでしょう。昨今の労働市場における人手不足や賃金上昇を背景に、今後も建築保全業務の単価が適正に見直されることが求められます。

建築保全業務の労務単価は、労働者に直接支払われる給与を対象とし、業務管理費や諸経費は含まれていません。そのため、実際の業務委託費を見積もる際には、これらの費用も加味する必要があります。例えば、清掃会社が請け負う清掃業務では、労務単価に加え、機材や洗剤などの物品費、管理費なども含めた総額での契約が求められます。

また、労務単価の決定には、技術者区分が重要な要素となります。保全技師はⅠからⅢまでのランクに分かれ、経験や資格に応じて単価が異なります。保全技師Ⅰは高度な技術力と判断力を持ち、15年以上の経験を有する専門家として位置付けられています。一方、清掃員や警備員はAからCの3区分に分類され、経験や資格の有無によって単価が変動します。これにより、業務の専門性や技能レベルに応じた適正な賃金が設定される仕組みになっています。

今回の改定では、特に清掃員や警備員の賃金が大幅に上昇した点が特徴的です。例えば、清掃員Bの全国平均単価は10.8%増の13,900円、警備員Bは9.8%増の15,200円となりました。これは、近年の労働力不足と賃金上昇の流れを受けての対応であり、より多くの人材を確保し、安定した施設管理を実現するための措置といえます。

今後の建築保全業務の人件費動向は、労働市場の変化や社会情勢に大きく影響されるため、毎年の調査を通じて適正な水準を維持することが求められます。特に、官庁施設の維持管理に関わる人材の確保と育成が課題となる中、適正な労務単価の設定が、業界全体の発展に寄与する重要な要素となります。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ