労務・人事ニュース

一般職業紹介状況 （令和7年2月分）（熊本労働局）

2025年4月1日に発表された熊本県の令和7年2月分の一般職業紹介状況によると、有効求人倍率は1.19倍となり、前月から0.02ポイント低下しました。この結果は全国平均の1.24倍をやや下回るものの、依然として比較的高い水準を維持しています。一方で、新規求人倍率は2.11倍となり、こちらも前月より0.09ポイントの減少となりました。求人・求職の両面で減少傾向が見られ、企業の採用活動、及び求職者の動向に慎重な姿勢が反映された形です。

有効求人数は33,460人と、前月比で2.0％減少し、2か月ぶりの減少となりました。一方、有効求職者数は28,042人で、前月比0.6％の減少と、こちらは3か月連続の減少となりました。有効求人倍率が低下した背景には、求人数の減少幅が求職者数の減少幅を上回ったことが挙げられます。企業側の求人抑制と、求職者側の就労意欲の低下が同時に進行していることは、今後の雇用市場に不安定要素を残す要因と言えるでしょう。

正社員有効求人倍率は1.15倍で、前年同月を0.02ポイント上回っており、正社員を希望する求職者に対しても比較的多くの求人が存在していることが分かります。ただし、その差はわずかであり、企業側の正社員採用意欲が一様に強いわけではないことも同時に示しています。実際に、正社員としての採用においても業種ごとのばらつきが顕著で、製造業や建設業では求人減が目立つ一方で、医療や福祉などのインフラ系職種では比較的安定した求人が維持されています。

具体的に新規求人数を見ると、熊本県全体で12,018人となり、前年同月比で11.8％減少しました。特に一般フルタイム求人は9.2％減の7,674人、一般パートタイム求人も16.0％減の4,344人と大幅なマイナスで、フル・パート問わず求人意欲が後退している様子がうかがえます。これはインフレや先行き不透明な経済情勢を背景に、人件費を抑制する動きや、企業の採用選別が厳しくなっていることが原因のひとつと考えられます。

産業別にみると、建設業で10.0％減、製造業で14.7％減、運輸業・郵便業で16.7％減、卸売業・小売業で15.8％減、宿泊業・飲食サービス業で13.7％減、医療・福祉で12.3％減、サービス業（他に分類されないもの）で5.4％減と、主要産業すべてで前年同月を下回る結果となりました。特に製造業と運輸業では二桁の減少率が続いており、コロナ禍以降の経済再構築の遅れや、労働条件の改善遅延が人材確保に影響していることが示唆されます。

求職者側の動向としては、新規求職申込件数が5,447件で、前年同月比8.6％の減少となり、4か月連続のマイナスとなっています。特に一般フルタイム希望者は12.6％減と顕著であり、働き方へのニーズが多様化していることや、求職活動を控える動きが広がっていることが影響していると見られます。離職者のうち、事業主都合による離職者は1.4％増加した一方で、自己都合離職者は5.6％の減少となっており、労働市場での自発的な移動がやや鈍化していることが分かります。

就職件数は1,761件と、前年同月比で14.6％減少し、9か月連続の減少となりました。就職率は32.3％で、前年同月より2.3ポイント低下しています。この数字は、求職者が企業に応募しても実際の採用に至る割合が減少していることを示しており、企業側の採用基準の厳格化、あるいは求職者の希望とのミスマッチが背景にあると考えられます。

地域別の求人倍率をみると、最も高かったのは阿蘇の1.57倍、次いで球磨が1.32倍、天草が1.15倍となり、比較的地方部で高い傾向が見られます。反対に、八代では1.06倍、水俣では1.32倍、玉名で1.18倍と、求人と求職のバランスがやや均衡しつつある地域も存在します。こうした地域差を理解した上での採用戦略、つまり、地域密着型の雇用施策が今後さらに重要になると予想されます。

これらの雇用統計は、企業の採用担当者にとって、自社の人材戦略を見直す上で極めて有益な情報です。特に、新卒や若年層の確保が課題となる中で、労働市場の実態を正しく把握し、早期からの採用広報やキャリア支援型の求人情報の提示などが求められます。また、地域差や産業特性に応じた雇用対策の導入により、より効果的な採用活動を展開することが可能になるでしょう。

⇒ 詳しくは熊本労働局のWEBサイトへ