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2025年3月1日

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令和7年3月改定!公共工事労務単価6.0%上昇で企業の人材戦略はどう変わる?

令和7年3月から適用する公共工事設計労務単価について ~今回の引き上げにより、13年連続の上昇~(国交省)

令和7年3月より、公共工事の設計労務単価が改定されることが決定し、全国的に6.0%の引き上げが実施されることとなった。この改定により、全国全職種の加重平均単価は24,852円となり、平成25年度の法定福利費相当額の加算措置以降、13年連続の上昇となる。この改定は、建設業界における労働環境の改善や人材確保の観点からも重要な意味を持ち、採用担当者や経営層にとって注目すべき内容である。

今回の改定では、全国47都道府県の51職種ごとに設計労務単価が見直され、時間外労働の上限規制への対応に必要な費用も反映されている。特に主要12職種の平均単価は、前年比5.6%増の23,237円となり、技能職における賃金水準の向上が図られた。例えば、大工の単価は6.3%増の29,019円、左官は6.8%増の29,351円と、大幅な上昇が見られる。これにより、公共工事に従事する建設労働者の待遇が改善され、業界全体の人材確保にも寄与すると考えられる。

公共工事設計労務単価の改定は、労働市場の実態を反映するために、毎年の公共事業労務費調査の結果をもとに決定される。この調査は、全国9,954件の公共工事を対象とし、約85,661人の建設労働者の賃金データを集計することで、最新の市場動向を把握している。特に、近年の建設業界では高齢化や若年層の就業者減少が課題とされており、適正な労務単価の設定が人材確保の鍵となる。

また、公共工事の積算に用いられる労務単価には、基本給相当額、基準内手当、臨時給与(賞与等)、実物給与(食事等)が含まれている。一方で、時間外や深夜労働に対する割増賃金、現場管理費、一般管理費などの諸経費は含まれておらず、これらの費用は別途計上する必要がある。特に、労務単価に法定福利費の事業主負担分は含まれないため、企業側は労働者の雇用に伴う必要経費を適切に計算し、見積もりを行うことが求められる。

労務単価の上昇は、企業のコスト増につながる一方で、適正な賃金の支払いによる労働環境の改善が期待される。例えば、全国平均の新単価24,852円に対し、事業主が負担すべき必要経費を含めた実際の雇用コストは、35,041円となる。この差額には、安全管理費や労務管理費などが含まれており、企業が適正な労務費を確保しなければ、工事の品質や労働者の安全にも影響を及ぼす可能性がある。

特に採用担当者にとっては、今回の改定が新たな人材確保のチャンスとなる。建設業界では、技術者や職人の高齢化が進んでおり、若手人材の確保が喫緊の課題とされている。賃金の引き上げは、若年層の建設業への参入を促し、業界の活性化につながる可能性がある。さらに、公共工事の受注を増やすためには、企業としても適正な労務費の支払いを行い、安定した雇用環境を整えることが重要となる。

また、都道府県別の単価を比較すると、地域ごとに大きな差が見られる。例えば、東京都の型枠工の単価は30,214円、鉄筋工は30,071円となっており、都市部では比較的高い水準となっている。一方で、地方では単価がやや低めに設定されている傾向があり、地域ごとの労働市場の実態が反映されている。このため、企業の採用戦略としては、地域ごとの単価を考慮しながら、適正な人件費の設定を行うことが求められる。

さらに、今後の動向として、2024年4月から適用される時間外労働の上限規制が、建設業界に与える影響も考慮する必要がある。長時間労働の是正が求められる中で、企業は労務費の適正配分や働き方改革を進める必要があり、人材確保の面でも新たな対応が求められることになる。

採用担当者にとって、今回の公共工事設計労務単価の改定は、人材戦略を見直す契機となる。適正な賃金を確保し、魅力的な労働環境を整えることで、優秀な人材の確保につなげることができる。特に、若年層や未経験者の採用においては、賃金水準の引き上げをアピールポイントとし、業界全体のイメージ向上に努めることが重要だ。

最後に、企業としては、今回の改定を踏まえ、労務費の適正な計上と労働環境の改善を進めることが求められる。公共工事の受注を目指す企業は、新たな単価を考慮したコスト管理を行いながら、人材採用や育成に積極的に取り組むことが、持続的な成長につながるだろう。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ