2024年9月21日
労務・人事ニュース
使用者による障害者虐待が増加中!令和5年度、通報件数が1,512事業所に
「令和5年度使用者による障害者虐待の状況等」の結果を公表します(厚労省)
厚生労働省は、令和5年度における「使用者による障害者虐待の状況等」に関する調査結果を発表しました。この調査は、障害者虐待防止法に基づき、各都道府県の労働局が障害者虐待の状況を把握し、まとめたものです。令和5年度の報告によると、通報や届出のあった事業所数は1,512に達し、前年度と比べて22.9%の増加を示しました。また、虐待の対象となった障害者数は1,854人で、こちらも前年度比29.4%増加しており、障害者虐待の深刻さが浮き彫りとなっています。
虐待の認定件数も増加傾向にあります。令和5年度には、虐待が認められた事業所数は447に達し、前年度と比べ4.0%の増加が見られました。また、虐待が認められた障害者数は761人で、16.0%の増加となっています。これらの数字は、依然として使用者による障害者虐待が解決されるべき重要な課題であることを示しています。
さらに、虐待の種別に関しては、経済的虐待が最も多く、659件が報告されました。これは全体の80.6%を占め、次いで心理的虐待が71件(8.7%)、放置等による虐待が42件(5.1%)、身体的虐待が31件(3.8%)、そして性的虐待が15件(1.8%)と続きます。これらのデータは、特に経済的虐待が障害者に対する最も頻繁な虐待形式であることを示しており、労働環境における支援と監視の必要性が高まっていることを物語っています。
虐待が認められた障害者の就労形態別の内訳では、パート・アルバイトの障害者が456人(59.9%)と最も多く、次いで正社員が195人(25.6%)、期間契約社員が30人(3.9%)、派遣労働者が4人(0.5%)と続いています。この結果から、非正規雇用の障害者が特に虐待のリスクにさらされていることがわかります。
また、虐待を行った使用者の内訳を見ると、事業主が最も多く376人(82.3%)、次いで所属の上司が54人(11.8%)を占めています。このデータは、事業主および管理職が障害者の保護と支援において重要な役割を果たすべきであることを強調しています。
労働局の対応も多岐にわたっており、令和5年度には867件の措置が講じられました。このうち、労働基準法に基づく指導等が最も多く743件(85.7%)を占めています。これに加え、障害者雇用促進法や男女雇用機会均等法に基づく助言・指導が行われており、障害者の権利保護に向けた取り組みが進められています。
さらに、事業所の規模別の虐待件数を見てみると、従業員5~29人の事業所が213件(47.7%)と最も多く、次いで従業員5人未満の事業所が72件(16.1%)と続いています。これらの結果から、小規模事業所においても障害者虐待が発生しやすいことが示唆されており、特に注意が必要です。
以上の結果から、障害者虐待防止に向けた更なる取り組みが必要であることが明確になっています。企業は障害者の権利を守り、健全な労働環境を提供するために、より一層の努力が求められます。労働局と地方公共団体は引き続き緊密な連携を図りながら、使用者による障害者虐待を未然に防止し、発生した場合には迅速かつ適切な対応を行うことで、障害者が安心して働ける社会を実現していくことが期待されます。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ