2024年12月9日
労務・人事ニュース
価格交渉促進月間で28.3%が交渉成功!中小企業の課題と成果とは
価格交渉促進月間(2024年9月)フォローアップ調査の結果を公表します(経産省)
2024年9月の価格交渉促進月間フォローアップ調査の結果は、価格交渉や価格転嫁の現状を理解し、改善するための重要な指針となるものです。この調査は、原材料費やエネルギー費、労務費の高騰といった経済環境の変化が中小企業に与える影響を測定し、その課題を明らかにするために行われました。また、調査結果を基に、中小企業と発注企業間の取引環境をより公正で持続可能なものにするための政策が策定される予定です。
今回の調査では、全国30万社の中小企業に対してアンケート調査が行われ、約51,282社から回答が寄せられました。この調査の目的は、2024年4月から9月末までの期間における価格交渉および価格転嫁の状況を詳細に把握することでした。さらに、全国の中小企業から2,000社を対象にヒアリングが実施され、価格交渉の内容や価格転嫁の実施状況が直接確認されました。こうした大規模な調査を通じて得られたデータは、現場の実態を反映しており、信頼性が高いものとされています。
調査結果によると、発注企業から価格交渉の申し入れがあり、実際に交渉が行われた割合は、前回調査と比較して約2ポイント増加し、28.3%に達しました。これにより、価格交渉が行われた割合は全体の86.4%となり、交渉実施率が高まっていることが明らかになりました。一方で、価格交渉が行われなかった割合は13.6%に減少しており、交渉環境の改善が進みつつあることがうかがえます。ただし、依然として約15%の企業が発注企業の申し入れを辞退するなど、交渉を実施できない状況に直面していることも事実です。
価格転嫁の状況についても注目すべきポイントがいくつかあります。コストの上昇に伴い価格転嫁が行われた企業の割合は49.7%と、前回調査と比較して約3ポイント増加しました。特に、全額転嫁に成功した企業の割合は25.5%で、こちらも約3ポイントの増加が見られます。一方で、価格転嫁が全く行われなかった、またはコスト上昇分が十分に反映されなかった企業も存在しており、全体の20.1%がこうした状況に該当します。このように、価格転嫁に成功している企業とそうでない企業との間で明確な二極化が進んでいる現状が浮き彫りになりました。
さらに、価格交渉や価格転嫁の実施状況は、業種やサプライチェーンの階層によって大きな差があることがわかりました。調査によれば、一次請けの企業では価格転嫁率が51.8%と高い水準にある一方で、四次請け以上の企業では35%程度にとどまっており、特に全額転嫁できた企業の割合は1割程度と低い水準にあります。これらの結果は、取引階層が深くなるにつれて価格転嫁が難しくなるという課題を浮き彫りにしています。このような状況を改善するためには、サプライチェーン全体で価格転嫁の公平性を確保することが求められます。
労務費の交渉に関しても重要な指摘がなされています。調査結果によると、価格交渉が行われた企業のうち、労務費についても交渉を行った企業の割合は70.4%に達しました。これは、前回調査の68.9%と比較して約1.5ポイント増加しており、労務費指針の浸透が進んでいることを示しています。一方で、労務費の上昇にもかかわらず交渉を行えなかった企業の割合は約7.6%と、前回調査の8.8%から減少しましたが、依然として一定の割合を占めています。この結果からも、価格交渉のさらなる推進が必要であることがわかります。
調査の中で注目されるもう一つのポイントは、価格転嫁と賃上げ率との相関関係です。価格転嫁ができている企業ほど、賃上げ率も高い傾向が見られました。例えば、全額価格転嫁ができている企業の中では、賃上げ率が5%以上の企業の割合が他の企業と比較して高いことが確認されています。このように、価格転嫁が労働者の待遇改善につながることが示されており、企業の持続可能な経営のためにも価格交渉の実施が重要であることが再認識されます。
政府は、この調査結果を受けて、価格交渉および価格転嫁をさらに促進するための具体的な対策を発表しました。まず、2025年2月上旬を目途に、発注企業ごとの価格交渉および価格転嫁の評価を記載したリストを公表する予定です。このリストは、交渉に積極的でない企業を特定するための指標として機能し、評価が低い企業には事業所管大臣名での指導や助言が行われる予定です。また、政府は3月に予定されている次回の価格交渉促進月間に向けて、さらなる広報活動や研修の強化を行い、取引の適正化を進める方針です。
今後も、価格交渉促進月間の調査結果を基に、発注側企業に対して価格交渉の場を設定し、価格に関する説明を十分に行うよう求めていく必要があります。同時に、サプライチェーン全体での公平な価格転嫁を実現するために、政府と企業が連携し、持続可能な取引環境を築くことが重要です。このような取り組みを通じて、中小企業が直面する課題を解決し、公正で安定した取引関係を構築することが期待されます。
⇒ 詳しくは経済産業省のWEBサイトへ