2024年12月15日
労務・人事ニュース
価格転嫁の課題を直撃!2024年、仕入価格上昇が企業経営に与える影響
生活衛生関係営業の価格動向に関するアンケート調査結果(日本公庫)
2024年11月29日、日本政策金融公庫の調査結果が公表されました。この調査は、生活衛生関係営業を営む3,290企業を対象に実施されたもので、回答率は95.5%に達する3,142社が有効回答を提供しました。今回の調査では、仕入価格と販売価格の動向、価格転嫁の状況、さらに将来の見通しについて詳細に分析されています。
まず、仕入価格に関する動向では、全体の79.9%の企業が前年同期比で価格が上昇したと回答しました。この割合は前年調査より2.8ポイント低下したものの、依然として高水準を維持しています。業種別に見ると、特にホテル・旅館業(94.4%)や飲食業(91.3%)で価格上昇が顕著でした。一方、価格が変わらないとした企業は17.3%、低下したと答えた企業はわずか2.8%にとどまりました。
こうした仕入価格の上昇が企業経営に及ぼす影響も注目されます。「かなり影響がある」または「ある程度影響がある」と答えた企業は全体の87.7%に達し、特に飲食業やクリーニング業ではその割合が高いことが明らかになりました。これらの結果は、仕入価格の変動が経営リスクとして依然大きな課題であることを示しています。
次に、仕入価格上昇分を販売価格へどの程度転嫁できたかについて、企業の状況を調査しました。「全て転嫁できている」と回答した企業はわずか3.4%にすぎず、「概ね転嫁できている」(14.4%)や「一部転嫁できている」(46.8%)といった部分的な転嫁が主流でした。しかし、「全く転嫁できていない」とした企業も32.2%存在し、前年調査より1.1ポイント増加していることが課題として浮き彫りになっています。特に美容業や公衆浴場業では転嫁できていない割合が相対的に高いことがわかりました。
販売価格の動向に目を向けると、全体の48.8%の企業が前年同期比で販売価格を引き上げたと回答しました。しかし、この割合は前年調査より6.4ポイント低下しており、価格の据え置きや引き下げを選択する企業が増加している様子が伺えます。業種別に見ると、食肉・食鳥肉販売業(74.5%)やホテル・旅館業(73.3%)が販売価格の引き上げを最も積極的に行っています。販売価格を引き上げた理由としては、「仕入価格上昇分の転嫁」(84.3%)が圧倒的に多く、人件費やその他の経費増加が続きました。
しかし、販売価格の引き上げが必ずしも利益増加につながっていない点も見逃せません。価格を引き上げた企業のうち、「利益が不変」と答えた割合が58.5%と最も高く、次いで「利益が減少」(22.4%)、「利益が増加」(19.1%)の順となっています。この傾向は、価格転嫁の難しさを改めて浮き彫りにしています。
また、今後1年間の見通しについては、仕入価格が「上昇する」と予測する企業が76.6%に達しました。特に飲食業(85.8%)やホテル・旅館業(85.6%)がこの傾向を強く示しています。一方で、販売価格の見通しについては、「引き上げる」と回答した企業が全体の39.3%にとどまり、仕入価格上昇のペースに販売価格が追いついていない現状が浮き彫りになりました。
本調査の結果から、仕入価格の上昇が多くの企業の経営に重くのしかかっている現状が明確に示されました。特に、価格転嫁の難航や利益減少の懸念が課題として顕在化しています。こうした状況を改善するためには、企業が顧客の理解を得ながら販売価格を適切に調整することが求められるとともに、新たな付加価値を生み出す取り組みが必要不可欠です。
⇒ 詳しくは日本政策金融公庫のWEBサイトへ