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2024年11月19日

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価格転嫁実施率73.9%へ、中小企業の交渉状況を明らかにした最新調査

業況DIは、物価高による消費低迷が続き、再び悪化。先行きは、長引く経営課題多く、力強さを欠く(LOBO調査)

今回の調査は、中小企業の価格転嫁状況や経営課題を重点的に分析し、価格協議の実施と転嫁実績の関係や業種・規模別の動向を明らかにしています。調査結果によると、企業間の価格協議が進む一方で、特に小規模企業や特定の業種では課題が残ることが判明しました。全体として、コスト増加に伴う価格転嫁が一部で進展しているものの、依然として十分とは言えない現状が浮き彫りになっています。

企業の価格転嫁に関して、特にコスト上昇分を反映した価格協議の実施率は73.9%に達し、過去の調査と比較しても依然として高水準を維持しています。価格協議の動向について「協議を申し込んだ結果、話し合いに応じてもらえた」割合は66.3%、さらに協議が行われた企業全体のうち52.2%が「コストの4割以上を価格転嫁できた」と回答しています。これは2024年4月調査から1.3ポイントの増加を示しており、徐々に価格転嫁が浸透している傾向にあると言えます。

しかし、価格転嫁が十分に実現されていない企業も依然多く、小売業やサービス業では価格転嫁率が低い状況です。例えば、サービス業では「4割以上の価格転嫁」ができた企業が全体の約3割強にとどまり、厳しい経営環境が続いています。業種ごとの差異も顕著で、卸売業では7割以上の企業がコスト増加分の4割以上を価格転嫁できたと回答しており、業種により交渉力や価格転嫁の実現度に大きなばらつきが存在することが伺えます。

労務費の増加に関しても、転嫁の動向が調査されています。労務費上昇分の「4割以上の価格転嫁」が実現した企業は全体の36.8%で、2024年4月調査から2.9ポイント増加しました。しかし、この割合は他のコスト増加項目と比べて依然として低水準にとどまっています。特に小売業とサービス業では労務費の価格転嫁が難しく、建設業は6割に達する一方で、小売業やサービス業では全体を下回る結果が出ています。従業員規模別に見ると、小規模企業ではさらに低水準であり、特に従業員数が10人未満の企業においてはコスト転嫁が課題となっています。

企業が価格転嫁を進める上で必要とする支援策に関して、「支援策は必要ない」と回答した企業が最も多く30.6%を占めました。一方、「価格協議の必要性を経営者や取引担当者に周知・啓発することが必要」との回答も24.8%と24.0%に達しており、価格協議の重要性が企業内外に十分に認識されていないことが示唆されています。経営者や取引担当者に対して、価格協議の必要性や意識を浸透させるための施策が求められていると考えられます。また、価格協議を行った企業では、4割以上の価格転嫁が実現できた企業が6割を超える一方で、協議を実施していない企業では3割を下回る結果となり、価格協議の有無が転嫁実績に大きな影響を与えることが示されています。

今月の業況DI(景況判断指数)についても分析が行われており、物価高による消費低迷が続き、中小企業の業況が再び悪化しています。特に、個人消費の低迷が景気回復の障害となっているとの見解が多く、業況DIは前月比で悪化し▲17.2となりました。業種別では、特に小売業や卸売業が低迷しており、小売業は物価高の影響で消費者の買い控えが続いています。サービス業も秋の行楽シーズンで一部で堅調な動きを見せるも、生活関連サービス等の低迷が業績を下押ししています。また、建設業では資材価格の高騰や住宅関連の受注不振が継続しており、製造業は自動車関係が改善要因となっていますが、小幅な回復にとどまっています。

さらに、地域別の業況にも大きな違いが見られます。例えば、関東では観光客やイベント向けの消費は堅調である一方、地元住民の消費意欲低迷により小売業の業況は悪化しています。また、東海地域では消費者の節約志向の高まりから生活関連サービスが悪化傾向にあり、関西では大阪・関西万博に向けた建設需要が業況を支える要因となっています。しかし、各地で労務費の増加や消費者の買い控えが引き続き経営を圧迫していることが明らかになっています。

この調査結果を通じ、企業の規模や業種、地域によって異なる経営課題が浮き彫りとなっており、特に中小企業が直面する価格転嫁やコスト増に関する問題が重要な経営課題として認識されています。持続的な価格転嫁の実現に向けては、発注側企業との協議が今後さらに重要になると考えられ、企業の経営支援策として価格協議の必要性を経営者や取引担当者に浸透させるための施策が求められます。現状の厳しい経済環境を踏まえ、企業間での価格転嫁の交渉を円滑に進めるための具体的な支援策や協議の必要性を広く周知する取り組みが、今後の中小企業の安定経営にとって鍵となるでしょう。

⇒ 詳しくはLOBO調査のWEBサイトへ

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