2024年12月27日
労務・人事ニュース
全国で23,726の保育所が利用者数減少、保育士の確保が今後の課題に(令和5年社会福祉施設等調査の概況 厚労省調査)
令和5年社会福祉施設等調査の概況(厚労省)
令和5年に行われた「社会福祉施設等調査」の結果は、日本の社会福祉分野における現状をより深く理解するために非常に重要なものとなりました。調査の目的は、全国の社会福祉施設や事業所の数、在所者数、従事者数などの状況を把握し、社会福祉行政を推進するための基礎資料を得ることです。調査は毎年10月1日を基準日として実施され、今回は全国の福祉施設や事業所の実態について非常に詳しいデータが集められました。その結果、各施設や事業所の数、利用状況、従事者数などに関する重要な情報が明らかとなり、今後の福祉施策に大いに役立つことが期待されています。
調査結果によると、令和5年10月1日現在で、全国の社会福祉施設および事業所の数は合計149,662施設でした。そのうち活動中の施設・事業所は123,314にのぼり、調査対象となったすべての施設の約82%が活動を続けていることが確認されました。この調査結果は、社会福祉施策の効果を測るための重要な基礎データとして、今後の政策に反映されることになります。調査の対象となった施設は、主に高齢者福祉施設、障害者支援施設、児童福祉施設などで、これらの施設や事業所がどのような状況にあるのか、またその運営状況について詳細な情報が得られました。
施設数の変動については、特に注目すべき点があります。「有料老人ホーム(サービス付き高齢者向け住宅を除く)」は、前年と比較して506施設の増加が見られ、増加率は2.9%でした。この増加は、少子高齢化の進行とともに、高齢者向けの福祉施設の需要が増していることを示しています。一方、保育所等の施設は、前年より153施設減少し、減少率は0.6%となりました。この減少は、少子化が影響していると考えられ、今後の保育サービスの提供方法に変化が求められることが示唆されています。
また、施設の定員や在所者数についても注目すべき情報が得られました。保育所等の定員は2,266,613人、在所者数は1,905,477人となり、在所率は85.0%でした。これは、保育所等の施設において定員のほぼ8割以上が埋まっていることを示しており、保育需要が高いことが分かります。また、有料老人ホーム(サービス付き高齢者向け住宅を除く)の定員は689,810人で、在所者数は567,518人、在所率は84.0%でした。これも、増加する高齢者人口に対応するための施設数の増加と、その利用者数が密接に関連していることを示しています。
施設に従事する職員の数についても、調査によって明らかになった重要なデータがありました。全体での常勤換算従事者数は1,077,239人となり、その内訳は施設ごとに異なります。保育所等では、保育士の数が384,011人となり、前年と比較して減少傾向が見られました。この減少は、保育士不足という長年の課題が影響していると考えられます。一方、有料老人ホームでは、介護職員の数が141,459人となり、施設数の増加に伴い、従事者数も増加しています。特に障害者支援施設や障害福祉サービスに従事する職員の数も増加しており、社会福祉サービスの拡充が進んでいることがわかります。
福祉施設の利用状況についても、興味深い結果が得られました。居宅介護事業の利用者は、身体介護が中心で19.8回、家事援助が中心の利用者は8.9回となっています。また、重度訪問介護事業の利用者は、1人当たり27.3回の利用があり、移動介護が8.0回を占めています。このデータは、訪問介護や訪問型のサービスに対する需要が高まっていることを示しており、今後もこの分野におけるサービス提供が重要な課題となるでしょう。
障害児に対するサービスでは、放課後等デイサービス事業所の利用実人数が557,284人に達し、利用者1人当たりの訪問回数は6.8回となっています。このデータは、障害を持つ子どもたちへの支援がますます充実してきていることを反映しています。放課後等デイサービスがこれだけ多くの利用者に提供されていることは、障害を持つ子どもたちへの支援が今後ますます求められる社会的背景を示しています。
これらの調査結果は、社会福祉施設や事業所の現状を理解するために非常に重要であり、福祉政策の策定において重要な基盤となります。特に、福祉サービスの提供が社会的にますます重要になってきている中で、従事者の確保や施設の充実が今後の大きな課題となるでしょう。少子高齢化が進む中、福祉サービスの質と量をいかに確保するかが、社会全体の重要なテーマとして今後も注目され続けることは間違いありません。
また、調査の結果から、福祉施設の運営には大きなコストがかかることがわかり、政府や地方自治体による支援がますます重要であることが浮き彫りになりました。今後の社会福祉サービスの拡充と質の向上のためには、引き続き、従事者の待遇改善や施設の効率化が求められると同時に、福祉施設の利用者が快適に過ごせるような環境整備も進めていく必要があります。
このように、社会福祉施設等調査の結果は、福祉サービスが直面している課題を明確にし、今後の方向性を示す重要な資料となっています。これらの情報を基に、福祉政策がさらに充実し、全ての人々が支え合う社会の実現に向けた取り組みが進むことを期待しています。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ