2024年11月19日
労務・人事ニュース
全国の下水道管路の耐震化72%、一方で水道導水管は34%と停滞、災害時の懸念を浮き彫りに
上下水道施設の耐震化状況の緊急点検結果を公表します~国民の生命と暮らしを支える強靭で持続可能な上下水道システムの構築に向けて~(国交省)
2024年11月1日、国土交通省水管理・国土保全局は、全国の上下水道施設の耐震化状況について緊急点検の結果を公表しました。この点検は、2024年の能登半島地震で明らかになった上下水道インフラの耐震性の重要性を背景に実施され、国民の安全と生活を支えるための強靭な上下水道システム構築を目的としています。特に、災害時においてシステム全体の機能に関わる「急所施設」と避難所などの重要施設に接続する上下水道管路の耐震化状況が精査されました。その結果、これら施設の耐震化率がまだ十分でないことが明らかになり、今後の対応が求められています。
点検結果によると、上下水道の急所施設について、耐震化率は依然として低い水準にとどまっています。水道システムの主要施設である取水施設は約46%、導水管が約34%、浄水施設は約43%、送水管は約47%、配水池においても約67%の耐震化が進んでいるに過ぎません。下水道システムにおいても、下水処理場の耐震化率は約48%、下水道管路が約72%、ポンプ場は約46%と、全体的に耐震性に不安を残しています。また、避難所など災害時の避難先や救援活動の拠点となる重要施設に接続する管路の耐震化率はさらに低く、水道管路が約39%、下水道管路は約51%、汚水ポンプ場についても約44%にとどまっている現状が浮き彫りとなりました。さらに重要なのは、耐震化が両方の管路に施されている重要施設の割合がわずか15%に過ぎず、災害時におけるライフラインの脆弱性が深刻であることが示されています。
この点検結果を受けて、国土交通省はすべての水道事業者や下水道管理者に対し、現状の耐震化率向上に向けた具体的な「上下水道耐震化計画」の策定を要請しています。この計画の策定と実施状況のフォローアップを通じて、上下水道施設の耐震化を計画的かつ集中的に進める意向です。また、耐震化の推進に加え、上下水道事業の運営基盤の強化や施設規模の適正化、効率的な耐震化技術の開発、さらには災害時の代替機能や多重性の確保といった包括的な施策を展開することで、災害時にも機能が維持できる持続可能なシステムの構築を図るとしています。
この取り組みは、特に災害が頻発する日本において極めて重要です。上下水道は生活に欠かせないインフラであり、その脆弱性は住民の生命や健康に直接的な影響を及ぼします。たとえば、地震によって上下水道が機能しなくなれば、飲料水の供給や下水の処理が停止し、衛生環境が悪化する恐れがあります。そのため、耐震化の推進は国や地方自治体、そして水道事業者や下水道管理者にとって急務となっています。特に避難所や医療施設といった災害時に使用が集中する施設での耐震化は、人命救助や災害対応において不可欠であり、こうした重要施設への接続部分の耐震強化は喫緊の課題と言えます。
国土交通省が推進する耐震化計画は、自治体や事業者にとって負担の大きい取り組みではありますが、同時に長期的な視点で見れば、災害に対する備えとして必要不可欠です。計画的な耐震工事の進行や、施設の適正規模の設定、効率的な資源配分などを考慮しながら、現行システムの強化が進められることが求められています。また、最新技術の活用も不可欠です。たとえば、耐震工事の過程で新素材や新工法を導入することで、コスト削減や工期短縮が期待されます。さらに、災害時における水道や下水道の代替供給を確保するための多重性を備えることも重要であり、分散型の水供給システムや非常時対応設備の整備も、今回の取り組みの一環として推進されています。
国土交通省はこの計画の進捗状況を定期的に監査し、自治体や事業者と協力しながら、全体の耐震化率の向上に努める方針です。点検結果で示された現状は、まだ多くの課題を抱えていますが、国と自治体、さらには関係する民間企業の連携によって、災害に強い上下水道システムの実現が可能です。特に、日本では都市部と地方部でインフラ整備の状況が異なることもあり、地域ごとのニーズに応じた施策を進めることが求められます。全国的に均一な耐震化率の向上を目指す一方で、地域特有の地理的要因やリスクも考慮した計画が必要とされており、地方自治体と密に連携して地域特化の耐震計画を策定する動きが期待されます。
さらに、国民一人ひとりが安全で持続可能な生活を送るためには、こうしたインフラ整備に関する理解と協力が重要です。特に、生活インフラの根幹を支える上下水道の耐震化については、より多くの人々にその必要性と重要性が理解されることが望まれます。災害に強い街づくりの一環として、上下水道の耐震化を進めることは、国民の安全と安定した生活を守るための重要な基盤です。国土交通省の取り組みはまだ道半ばですが、今後の進展に期待が寄せられています。
⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ