2024年11月29日
労務・人事ニュース
全国の中高年18,600人を対象とした健康と就労状況の調査結果
第19回中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)の概況(厚労省)
この調査は、全国の中高年者世代を対象に、その健康、就業状況、社会活動の変化を追跡することで、厚生労働行政の施策立案に必要な基礎データを収集する目的で実施されました。具体的には、平成17年を初年度として毎年行われており、第19回目の調査が令和5年11月1日に実施されました。この調査は、団塊の世代を含む50歳から59歳の男女約18,600人を対象に行われ、その年齢層の変化や行動パターンを継続的に観察することで、政策形成に役立てるための詳細なデータを提供しています。
この調査の方法としては、被調査者が郵送された調査票に記入し、厚生労働省に返信する形で実施されました。第19回調査においては、調査対象者の年齢が68歳から77歳に達しており、これまでの集計結果を基に全体の状況が分析されています。この調査は単年度で完結するものではなく、各年度ごとに累積的にデータを収集することで、健康状態や雇用状況、社会活動の変化が長期的にどのように進行しているかを把握しています。
これまでの調査結果の中で、初回から第19回目までの調査対象者総数は延べ40,877人で、最初の回収率は83.8%でした。その後の回収率は90%以上を維持し続け、第19回調査では95.9%という高い水準に達しました。この高い回収率は調査の信頼性を担保するための重要な要素であり、データの網羅性を示すものです。また、各調査回の結果を一貫して追跡可能な15,523人が今回の集計対象とされており、これにより精度の高い分析が可能となっています。
この調査の主な焦点は、家族構成や健康状態、雇用状況、さらには社会活動への参加状況を多角的に捉えることです。特に、高齢者の健康維持や労働市場への参加、地域社会での役割など、社会全体の変化に対応するための施策づくりに直結するデータが得られています。具体的には、例えば高齢者の労働市場への再参加に関するデータや、地域コミュニティでの社会的孤立を防ぐための活動の実態などが分析されています。こうした情報は、地域社会の活性化や高齢者の健康寿命の延伸を目指す政策に反映されています。
調査データの利用に際しては、いくつかの注意点が指摘されています。データは四捨五入されているため、内訳の合計が総数と一致しない場合があるほか、比率が極めて小さい場合や減少傾向を示す場合には特定の記号が使用されています。これらはデータ解釈において重要なポイントであり、適切な分析と結論を導くために留意が必要です。
これまでの結果から、年齢が進むにつれ健康や雇用、社会的つながりがどのように変化しているかが明らかになってきました。例えば、第1回調査時に50代だった対象者が、現在では70代後半に差し掛かっており、その間に経験した生活の変化が詳細に記録されています。このような長期にわたるデータ収集は国内では珍しく、政策立案の基盤として非常に貴重です。
また、調査結果は高齢者対策だけでなく、労働政策や福祉政策にも反映されています。特に、地域の高齢者雇用を促進するための施策や、健康維持のための運動プログラムの策定など、具体的な施策が実現しています。さらに、こうした調査は単なるデータ収集にとどまらず、地域社会全体で高齢者を支える仕組みづくりにも寄与しており、その意義は大きいといえます。
この調査から得られた知見を活用し、より多くの企業や地域が高齢者の就労や社会参加を支援する取り組みを進めることが期待されます。また、今回のように継続的にデータを収集する取り組みは、高齢者対策をさらに進化させるための礎となるでしょう。企業や行政にとって、この調査結果を具体的なアクションに結び付けることが、これからの日本社会をより良い方向に導く鍵となります。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ