2025年1月28日
労務・人事ニュース
全国エレベーター安全対策、設置率37%で2.4ポイント上昇
エレベーターへの戸開走行保護装置の設置率は37% ~前年度調査より+2.4ポイント増加しました~(国交省)
令和7年1月21日、住宅局参事官(建築企画担当)からエレベーターへの戸開走行保護装置の設置状況に関する最新の調査結果が発表されました。令和5年度の定期検査報告を受け、設置率が37%と前年から2.4ポイント増加したことが明らかになりました。これは全国約76万台のエレベーターのうち、約28万台に該当します。
戸開走行保護装置は、エレベーターの扉が開いたままかごが移動することによって起きる事故、例えば利用者が扉の枠やかごの間に挟まれるリスクを軽減するための重要な安全装置です。この装置は平成21年9月以降に設置された新規のエレベーターに義務付けられていますが、それ以前に設置されたエレベーターについては義務化されておらず、これが設置率の低さにつながっています。
今回の調査では、中央官庁の庁舎、国会の施設、地方公共団体の本庁舎を含むさまざまな施設での設置状況が公表されました。中央官庁庁舎では設置率が45.2%に達し、前年より5ポイントの増加が見られました。一方、国会施設では22.6%に留まり、改善が進んでいない状況が浮き彫りになっています。地方公共団体の本庁舎では設置率が63.6%と比較的高く、前年から3.7ポイントの増加を記録しました。
民間建築物への設置推進を目的とした支援策も強化されています。既存のエレベーターの改修に対し、地震時の管制運転装置や耐震補強措置を含む複数の防災対策工事が補助対象とされ、予算案にはリスタート運転機能や自動診断・仮復旧運転機能の追加工事も盛り込まれました。これらの工事には最大950万円の補助が提供されるほか、一部の追加機能については300万円の補助も可能です。
さらに、地方公共団体の支援制度の整備も改修を進める鍵となっています。所有者や管理者が支援措置を活用するためには、地方公共団体による補助制度の有無が重要です。これを背景に、建築物の管理者や所有者に向けたリーフレットの配布や説明会の実施が進められています。
特に注目されるのは、全国各地での設置状況の違いです。例えば、北海道や沖縄県では設置率がそれぞれ32.7%と52.4%となり、地域ごとの進捗に大きなばらつきがあることがわかります。一部の地方公共団体では設置率が50%を超える一方で、都市部では設置率が30%台に留まる自治体もあります。このばらつきの背景には、予算や地域の優先事項が大きく関与していると考えられます。
安全性の向上に向けた取り組みとして、エレベーターの防災対策改修工事が進められていますが、引き続き多くの課題が残されています。特に、古い建築物に設置されたエレベーターに対する改修の必要性が高まる中、建物所有者や管理者の理解を得るための啓発活動が重要です。また、政府や地方自治体が一層の財政的支援を提供することで、設置率の向上が期待されています。
今後、これらの施策がどのように進展するかが注目されます。エレベーター利用者の安全を確保し、事故を未然に防ぐためには、さらなる取り組みが求められるでしょう。
⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ