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2024年11月17日

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全国医療施設の減少傾向が鮮明に、令和6年8月末で634床減少の理由

医療施設動態調査(令和6年8月末概数)(厚労省)

令和6年8月末の医療施設動態調査結果により、日本国内の医療施設の現状についてのデータが明らかになりました。この調査では、病院、一般診療所、歯科診療所の施設数と病床数の推移が観察され、全体として微増減が見られるものの、医療需要や地域ごとの医療供給体制の現状が浮き彫りとなっています。特に、各施設の種類や地域別の差異が注目されており、医療政策の策定に重要な基礎データとして位置づけられています。

令和6年8月末時点での全国の医療施設数は、病院が8,062施設、一般診療所が105,162施設、歯科診療所が66,390施設と報告されています。これらの施設のうち、病院数は前月から2施設減少し、一般診療所は36施設増加しました。歯科診療所は42施設減少しています。この増減傾向は、医療分野での競争や地域需要の変化に対する各施設の対応能力の違いを示唆していると考えられます。病院の減少が進む一方で、地域医療のフロントラインを担う一般診療所が増加していることから、より小規模で柔軟な診療所の必要性が高まっていると解釈されます。

病床数の推移に関しては、全国の病床数が1,542,929床と報告され、これは前月比で634床の減少となっています。病院の病床数は1,470,192床で、423床の減少が見られました。さらに、精神病床や感染症病床、結核病床、療養病床などの専門病床にも変化があり、精神病床は12床、結核病床は19床、療養病床は235床減少しました。一方で、歯科診療所の病床数は7床増加しています。こうした病床数の変動は、医療提供体制の変化や患者の治療ニーズの変化を反映していると考えられ、特に長期療養が必要な高齢者向けの療養病床の需要が今後も増加すると予測されています。

医療施設の運営主体別に見ると、病院の多くは医療法人が運営しており、その数は5,628施設で、827,635床を提供しています。これに次いで、公益法人や地方自治体などの運営する病院も重要な役割を果たしており、都道府県や市町村が運営する病院の数は合計で772施設です。これらの施設が地方の医療供給を支えている一方、都市部では私立学校法人や社会福祉法人、会社経営の病院も増加傾向にあり、多様なニーズに応える医療サービスが展開されています。また、医療機関の約92施設は個人によって運営されており、地域密着型の医療提供が実現されています。

都道府県別に見ると、東京都が最も多くの病院と診療所を有し、病院数は634施設、病床数は124,696床に達します。これは、他の都道府県を大きく上回る数字であり、東京が全国の医療需要に応えるための基盤を整えていることを示しています。これに対して、鳥取県や島根県などの地方では病院数が50施設未満であり、地域によって医療リソースの分布に大きな差異が存在することが明らかです。特に北海道や沖縄などの地方都市圏では、医療資源の確保が課題となっており、今後はこれら地域の医療サービス拡充が求められるでしょう。

療養病床についても、都道府県ごとに差があり、東京都の療養病床数は21,460床で最多です。これは、急性期の治療を終えた患者や慢性期の患者のケアに対応するための重要な施設とされています。また、地域医療支援病院や精神科病院、感染症病床を備えた病院も東京を中心に集約されており、大都市圏での医療需要に応えるための設備投資が続いています。しかし、地域によってはこうした専門病床の確保が難しく、特に結核や感染症の管理において医療格差が課題となっています。

今回の調査から、全体的に病床数が減少傾向にある中で、療養病床や一般診療所の無床施設が増加している点が注目されます。これは、高齢化社会に対応するために在宅医療や地域密着型の医療サービスが求められていることの反映と考えられ、医療従事者の役割も多様化しています。医療施設の減少に伴う医師不足も懸念されており、地方での医療従事者の確保が急務となっています。医療機関におけるデジタル化やリモート診療の導入が進む一方、現地での医療サービス提供体制の維持も重要な課題です。

このような医療動態の変化に対し、国や地方自治体は医療供給の不均衡解消に向けた施策を講じる必要があります。地域の実情に応じた医療体制の整備や、医療法人や社会福祉法人との協力によるネットワークの強化が求められるでしょう。また、医療従事者の働き方改革や研修機会の提供など、質の高い医療サービスを維持するための人的資源の充実も不可欠です。

さらに、少子高齢化により増加する医療ニーズに対応するため、介護施設との連携や予防医療の推進も重要なテーマとなっています。高齢者が安心して生活できる地域づくりには、医療と福祉が一体となった支援体制が求められ、医療機関が地域の健康を支える中心的な役割を果たすことが期待されています。今回の調査結果は、今後の医療政策の方向性を見定める上で重要な資料となり、地域ごとの医療ニーズに対応した柔軟な施策が急務です。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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