2024年5月26日
労務・人事ニュース
全国7,780社の企業を対象にしたハラスメント実態調査 パワハラ64.2%、セクハラ39.5%の現状
「 職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表(厚労省)
令和5年度厚生労働省の委託事業として行われた「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」の概要が発表されました。この報告書は、職場におけるパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの実態を把握し、労働環境の改善に向けた具体的な対策を講じるための基礎資料となります。今回の調査は、令和4年4月に施行された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」に基づき、中小企業を含む全ての企業におけるハラスメント対策の現状を調査するものでした。
この調査では、全国の従業員30人以上の企業・団体を対象に、郵送およびウェブでのアンケートが実施されました。調査は2023年12月1日から12月29日まで行われ、25,000件の調査票が発送されました。そのうち、7,933件が回収され、31.1%の有効回答率となりました。
さらに、インターネットを利用した労働者に対する調査も併せて行われ、全国の企業・団体に勤務する20~64歳の男女8,000名を対象としました。この調査は、2024年1月11日から1月29日まで実施され、過去5年間に妊娠・出産や育児休業等を経験した女性労働者1,000名、および過去5年間に育児に関する制度を利用しようとした男性労働者500名を対象とした特別調査も行われました。
調査の結果、過去3年間に各ハラスメントの相談件数において、セクシュアルハラスメント以外の件数はほぼ変わらないと回答した企業が多く、セクシュアルハラスメントについては減少しているとの回答が多く見られました。顧客からの著しい迷惑行為については、件数が増加しているとの回答が多く、その他のハラスメントについては減少傾向が見られました。
業種別に見ると、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの相談が多かった業種として、「金融業、保険業」、「教育、学習支援業」、「宿泊業、飲食サービス業」などが挙げられます。また、顧客からの著しい迷惑行為については、「医療、福祉」、「宿泊業、飲食サービス業」、「不動産業、物品賃貸業」で相談が多かったことがわかりました。
企業が実施しているハラスメント対策としては、「相談窓口の設置と周知」が最も多く、約70%以上の企業が実施しています。次いで、「ハラスメントの内容や職場での防止方針の明確化と周知・啓発」が60%以上の企業で実施されていました。業種別では、「金融業、保険業」や「複合サービス業」での取組が他の業種よりも高い割合で実施されていることがわかりました。
顧客からの著しい迷惑行為に関しては、「医療、福祉」、「金融業、保険業」、「宿泊業、飲食サービス業」での取組が他の業種よりも多く見られ、従業員の精神的なケアが課題として挙げられました。就活セクハラに関しては、「金融業、保険業」や「情報通信業」での取組が他の業種よりも高い割合で実施されています。
今後の課題としては、「ハラスメントかどうかの判断が難しい」という回答が多く見られ、企業側では自主的な取組の促進・支援が求められています。
これらの結果を踏まえ、厚生労働省は、企業と連携し、ハラスメント防止のための支援を強化していく方針です。具体的な対策として、ハラスメントに対する相談窓口の設置や、ハラスメント防止方針の明確化と周知・啓発活動の強化などが挙げられます。今後も企業と労働者の双方が協力し、健全な職場環境の構築に努めることが求められています。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ