2025年5月31日
労務・人事ニュース
全業種で賃金上昇傾向、基本給と特別給与の構成比に変化の兆し(毎月勤労統計調査 令和7年3月分結果確報)
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毎月勤労統計調査 令和7年3月分結果確報 第1表 月間現金給与額(厚労省)
令和7年3月分の毎月勤労統計調査確報により、日本国内の産業全体における賃金の動向が明らかになりました。このデータは、企業の採用戦略や人材確保に直接関わる情報であり、特に人事担当者にとっては注視すべき内容が多く含まれています。今回の調査結果によると、全産業の平均現金給与総額は309,059円となり、前年同月比で2.3%の増加を示しました。これは企業側が報酬面での改善を試みている兆候とも捉えられ、採用競争の激化を裏付けるものです。
業種別に見ると、特に著しい上昇を見せたのが「鉱業・採石業等」で、平均現金給与は393,509円、前年同月比で実に35.1%の増加という結果でした。この背景には、エネルギー資源の需要増加や原材料価格の高騰などがあると推察されます。また、「きまって支給する給与」が357,172円(前年比23.5%増)、「所定内給与」も329,643円(同25.2%増)となっており、基本給部分でも大幅な改善が見られました。「特別給与」に至っては36,337円と、前年比で1935.7%という驚異的な伸び率を記録しており、一時的な特別支給やインセンティブの増加があった可能性があります。
一方、「建設業」は平均現金給与が403,600円と高水準であるものの、前年比では1.1%減少しており、特に「所定内給与」が331,802円(前年比0.7%減)となっている点が注目されます。これは人手不足と需要の高まりにも関わらず、賃金水準が横ばいまたは下落傾向にあるという矛盾を示しており、今後の人材確保において厳しい状況が予想されます。
「製造業」においては、平均現金給与が354,167円で前年比4.5%の増加となっており、安定的な成長を見せています。「きまって支給する給与」も329,195円(前年比3.6%増)、「特別給与」は24,972円(前年比16.1%増)となっており、堅調な賃金上昇が確認できます。この業界では、製造拠点の国内回帰や生産効率向上に伴い、人材への投資が進んでいると考えられます。
特に目を引くのは「電気・ガス業」で、平均現金給与は500,428円と全業種中最高水準を記録しました。前年比でも4.6%の増加があり、「所定内給与」421,155円(前年比4.6%増)、「きまって支給する給与」483,523円(前年比4.8%増)と、どの指標をとっても堅調な上昇が見られます。インフラ業としての安定性と高い専門性を背景に、引き続き高い給与水準が維持されています。
情報通信業も同様に高水準の給与を維持しており、平均現金給与は465,457円、前年比4.3%の上昇となっています。「きまって支給する給与」416,899円(前年比3.0%増)、「所定内給与」381,175円(前年比3.7%増)などからも、デジタル分野への需要増加により報酬面での競争が激化している状況が読み取れます。また、「特別給与」は48,558円で前年比17.1%の上昇となっており、成果報酬やインセンティブの導入が強まっていることがうかがえます。
これらのデータから読み取れるのは、スキルや専門性が求められる産業での賃金上昇が顕著であること、そして一方で、人的リソースの確保に苦しむ労働集約型産業では賃金が思うように上昇していないという現実です。特別給与の大幅な増加は、一時的な対応としては効果的ですが、長期的な人材定着には基本給部分の引き上げが不可欠となります。人材を確保し、離職を防ぐためには、安定した賃金設計と働き方の柔軟性が求められており、企業ごとの事情に応じたバランスの取れた対応が必要です。
加えて、採用担当者にとっては、こうした業界別の賃金データをもとに、自社の報酬水準が市場と比較してどう位置づけられるのかを常に確認することが重要です。特に人材確保が困難な職種やエリアでは、競合他社よりも高い給与水準や待遇改善策を提示することで、優秀な人材を引きつけやすくなります。
今回のデータは、単なる統計情報にとどまらず、企業の将来戦略や人材政策の根幹を支える重要な材料です。業種や職種、地域性を加味した給与設計が求められる時代において、客観的なデータを活用した判断こそが、企業にとっての信頼と成長の礎となるでしょう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ