2024年7月7日
労務・人事ニュース
公共職業安定所への相談件数245件、合理的配慮に関する相談214件
「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(令和5年度)」を公表しました(厚労省)
厚生労働省は、令和5年度の障害者差別禁止と合理的配慮提供義務に関する相談実績を公表しました。この報告書は、都道府県労働局やハローワーク(公共職業安定所)で取り扱われた相談内容を集計・分析したものであり、昨年度と比較してその動向を示しています。今回の報告書によれば、令和5年度に公共職業安定所に寄せられた相談件数は245件であり、前年から8.9%の増加を記録しています。
まず、相談内容の内訳を見てみると、障害者差別に関する相談が31件、合理的配慮の提供に関する相談が214件と報告されています。これらの相談は、主に障害者本人から寄せられたものであり、その数は213件にのぼります。事業主からの相談は6件、その他(家族等)からの相談は6件でした。障害者差別に関する具体的な相談内容としては、募集・採用時に関するものが最も多く、次いで配置に関するものが多く見られました。
合理的配慮の提供に関する相談内容は多岐にわたり、上司や同僚の障害理解、業務内容や業務量、相談体制の整備やコミュニケーションに関するものが多く報告されています。これらの相談内容は、障害者が職場で適切に働くために必要な配慮や環境整備の必要性を強調しています。
相談後の対応状況については、「ハローワークにおいて確認後、助言等を実施(法違反は確認されず)」や「相談のみで終了」というケースが多く見られました。この結果からも分かるように、多くの相談は早期に適切な対応がなされていることが伺えます。
次に、公共職業安定所が行った事業主への助言や指導の件数についてです。令和5年度には、法違反に係る助言件数が計上され、助言は18件、指導は2件行われました。しかし、都道府県労働局長が行った勧告件数は前年度に引き続き0件でした。この結果は、事業主側の対応が比較的良好であることを示唆しています。
さらに、労働局長による紛争解決の援助申立受理件数は10件と、前年度の1件から大幅に増加しています。これは、障害者と事業主の間での紛争が増加していることを示しており、合理的配慮の提供に関する問題が依然として存在することを示しています。また、障害者雇用調停会議による調停申請受理件数は9件と、前年度と同数でした。
報告書では、障害者差別や合理的配慮の提供に関する具体的な事例も紹介されています。例えば、募集・採用時においては、視覚障害者に対して募集内容を音声等で提供することや、聴覚・言語障害者に対して筆談等で面接を行うことが挙げられます。また、採用後においては、机の高さを調節することや、業務量を本人の習熟度に応じて調整すること、通院や体調に配慮した出退勤時刻や休暇の設定が含まれます。
さらに、合理的配慮の提供における「過重な負担」についても言及されています。事業主が合理的配慮を提供する義務は、過重な負担を及ぼす場合を除きます。過重な負担に該当するかどうかは、事業活動への影響や実現困難度、費用・負担の程度、企業の規模や財務状況、公的支援の有無などを総合的に勘案して判断されます。
最後に、厚生労働省は今後も制度の周知徹底に努めるとともに、公共職業安定所に寄せられる相談に適切に対応し、紛争解決のための業務を的確に実施していくとしています。このような取り組みを通じて、障害者が職場で平等に働くための環境整備が進むことが期待されます。
これらの取り組みとデータは、障害者が安心して働ける社会の実現に向けた重要な一歩であり、今後も継続的な努力が求められます。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ