2025年4月12日
労務・人事ニュース
公的年金の積立金が304兆円に到達、運用益53兆円超で過去最高水準(公的年金財政状況報告 令和5年度について)
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最終更新: 2025年4月25日 22:35
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「公的年金財政状況報告-令和5(2023)年度-」について(厚労省)
令和7年3月27日に発表された「公的年金財政状況報告-令和5(2023)年度-」は、年金制度の健全性と持続可能性に関する最新の実態を示す極めて重要な資料です。これは厚生労働省の年金数理部会が各年金制度の財政情報を専門的に横断的に分析・評価した結果を取りまとめたものであり、企業の採用担当者にとっても、将来の人材戦略や福利厚生制度の設計に関する示唆を多く含んでいます。
まず、令和5年度における公的年金制度全体の被保険者数は6,745万人と横ばいで推移しました。中でも厚生年金の被保険者は4,672万人と前年比で1.2%増加しており、企業規模の小さい事業所への短時間労働者の適用拡大が進んだことが要因とされています。実際、短時間労働者の増加率は11.7%に達し、女性においては12.7%と特に高い伸びを見せました。これは働き方の多様化に対する制度の対応が進んでいることを示しており、非正規雇用者やパートタイム従業員の福利厚生を強化したいと考える企業には重要な視点となります。
年齢分布に目を向けると、厚生年金加入者の最多年齢層は50〜54歳であり、これは団塊ジュニア世代が主要な労働力となっている現状を反映しています。また、65歳以上の被保険者も増加傾向にあり、男性では37.9%、女性では17.5%と、5年前から大きく上昇しています。高齢者の就業が進展している現実は、企業のシニア人材活用や定年後再雇用制度の見直しを促す契機となるでしょう。
財政面では、保険料収入が全体で41.8兆円、国庫や地方からの公的負担が12.1兆円、支出は54.5兆円であり、運用損益を除いた収支残は0.1兆円の赤字でした。しかし、時価ベースの資産運用益は53.6兆円に達し、結果として年度末の積立金は304.0兆円と前年度より53.5兆円増加しました。この高い運用成績は、主に国内外の株式市場の上昇と円安が背景にあると見られています。積立金の大幅な増加は制度の安定性を支える要素ではありますが、これは一時的な外的要因に依存している点を忘れてはなりません。
一方で懸念材料も浮き彫りになっています。国民年金第1号被保険者数は引き続き減少傾向で、財政検証の想定を下回って推移しています。これは若年層の減少や非正規雇用の増加、学生や無職層の保険料未納といった構造的な課題が影響していると考えられます。また、出生率の低下も深刻で、令和5年の合計特殊出生率は過去最低を記録し、財政検証における最も悲観的な想定すら下回る結果となりました。少子高齢化が進行し続ける中、今後の年金制度の持続可能性には強い懸念が残ります。
さらに、受給状況についても詳細な分析がなされています。令和5年度の公的年金全体の受給総額は58.1兆円で、前年度比1.9%の増加でした。受給者の年齢分布を見ると、70〜74歳が最も多く、全体の中心世代が移り変わってきていることが確認されました。平均年金月額は、男性で16.9万円、女性で11.6万円となっており、依然として男女格差が存在しています。女性における格差の背景には、平均報酬額の低さや就業年数の短さが挙げられます。
また、令和5年度にはマクロ経済スライドが適用され、年金給付の抑制が行われましたが、実質賃金がプラスに転じたことで、既裁定年金(既に受給が開始されている年金)の増加率を上回る結果となり、制度設計上の整合性が一定程度保たれたと評価されています。これは、平成12年の制度改正以来初めての現象であり、年金制度における所得連動性のあり方を再検討する契機となり得ます。
厚生年金の標準報酬月額別の分布では、男性は26〜30万円と41万円、女性は22万円にピークがありました。短時間労働者に限定すると、男女とも11.8万円に集中しており、賃金水準と年金制度の関係性を如実に物語っています。この分布構造を踏まえると、企業は報酬設計や労働時間管理を見直す際に、年金加入要件や将来の年金受給水準への影響も考慮する必要があります。
このように、「公的年金財政状況報告-令和5(2023)年度-」は、年金制度の現状と課題を浮き彫りにすると同時に、企業経営や人事制度の在り方に対しても多くの示唆を提供しています。特に採用担当者にとっては、高齢人材の活用、若年層への加入促進、非正規雇用者の福利厚生強化など、今後の戦略を構築する上で欠かせない情報が詰まっています。変化の時代に対応し、持続可能な人材戦略を描くためには、こうした公的情報の活用が極めて重要です。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ