2025年2月21日
労務・人事ニュース
円安の影響、日本企業の4割が「業績にマイナス」と回答
ジェトロ 2024年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(JETRO)
2025年2月4日、ジェトロ(日本貿易振興機構)が実施した「2024年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」の結果が公表された。今回の調査は2024年11月から12月にかけて、日本国内に本社を持ち、海外ビジネスに関心の高い9,441社を対象に実施され、有効回答数は3,162社、回答率は33.5%となった。世界経済の不確実性が増す中、日本企業は海外事業の展開にどのような変化を見せているのか、最新の調査結果が示す動向について詳しく見ていく。
調査結果によると、日本企業の海外市場に対する関心が大きく変化していることが分かった。特に米国の重要性が増しており、今後3年間で最も重視する輸出先として米国を選択する企業が急増した。これは中国を重視する企業が3年連続で減少している状況と対照的な動きである。海外事業拡大のターゲットとしても米国が最も注目されており、回答企業の約4割が米国を選択した。また、新規拠点設立を計画する企業は300社を超え、前年と比較して100社以上増加している。特に米国市場における事業拡大への関心が高まっていることが浮き彫りとなった。一方、大企業の間ではインドへの進出意欲が強まっており、事業拡大先としてインドを選んだ企業は全体の3分の1を超えた。これまでの主要市場であった中国から、米国やインドなど他の市場へとシフトする動きが加速している。
地政学的なリスクの高まりにより、多くの企業が調達戦略の見直しを進めている。現在、部材の海外調達において最大の供給国は依然として中国であり、全体の約5割が中国を主要な調達先としているものの、その安定性に懸念を抱く企業が増えていることが調査から明らかになった。調査では、2割以上の企業が地政学リスクの影響をすでに受けていると回答し、今後の影響を懸念する企業は5割に達している。このようなリスクを背景に、6割以上の企業が調達先の分散や多元化を推進すると回答しており、特に中国発の輸出を見直す動きが増えている。サプライチェーンの安定性確保に向けた対応が急務となっていることが分かった。
円安の進行による影響についても、企業の業績に対する影響が分かれる結果となった。回答企業の4割が円安を業績にマイナスと捉えている一方で、2割の企業はプラスの影響を受けていると回答した。企業が望ましいと考える為替レートは1ドル120~124円が最も多く、現在の為替水準と比較すると、より安定した円相場を求める声が多いことがうかがえる。今後の為替動向が日本企業の収益にどのような影響を及ぼすかが注目される。
人材面では、海外展開のための高度外国人材の活用が広がりつつあることが明らかになった。調査によると、約半数の企業が外国人材を雇用しており、そのうち54%が高度外国人材を採用している。高度外国人材がもたらす効果については、約7割の企業が海外展開への貢献を実感していると回答し、グローバル市場での競争力向上に不可欠な存在となっていることが示された。また、人権に関する企業の意識も向上しており、人権尊重の方針を策定している企業は前年から約10ポイント増加し、全体の約4割に達した。特に大企業では約8割がすでに方針を策定済みであり、人権デューディリジェンスの実施割合も6.5ポイント増加していることから、持続可能な経営に向けた取り組みが進んでいることが明確になった。
この調査結果から、日本企業の海外事業展開において米国市場の重要性が増していること、インドなどの新興国への進出が進んでいること、さらには地政学リスクを踏まえたサプライチェーンの分散が急務となっていることが分かった。これらの動向は今後の日本経済の国際競争力にも大きな影響を与える可能性がある。また、円安の影響を踏まえた経営戦略の柔軟性が求められ、高度外国人材の活用や人権意識の向上といった社会的な取り組みも重要視されている。今後、日本企業がこれらの課題をどのように乗り越えていくのかが注目される。
⇒ 詳しくは独立行政法人日本貿易振興機構のWEBサイトへ