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2024年11月15日

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労使協定の改定で127事業所が対応、派遣労働者の待遇改善を目指す新方針

第375回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 資料1 労使協定の見直しを行う派遣元事業主への支援及び取組の進捗状況について(厚労省)

派遣元事業所が取り組む労使協定の改定とその進捗状況について、厚生労働省が具体的な支援策を実施しています。令和6年4月1日以降、各都道府県労働局が対象事業所に個別のフォローアップを実施し、労使協定の改定や賃金差額の支払いを支援しています。この取り組みは、派遣労働者の賃金水準を適正に保つため、労使協定を再締結する過程で必要な諸経費やシステム変更、退職した労働者との連絡などの負担が事業所に生じる中で、円滑な改定を実現するためのものです。特に、ハローワーク別の地域指数の算定誤りを是正し、改定後の新しい協定が適用されることで、派遣労働者1,242名に対する賃金引き上げおよび差額の支払いが進められています。

改定が必要とされる派遣元事業所数は127件で、労働局が実施した賃金水準の確認作業では令和6年9月末時点で全体の進捗が把握されています。これらの事業所は、派遣労働者の労働条件を改善するために賃金の引き上げ、差額の支払いを含む労使協定の再締結を進めており、一部の事業所では既に賃金差額の支払いが確定しました。

しかし、これまでの対応状況を踏まえ、事業所ごとの進捗が異なるため、引き続き都道府県労働局が個別に支援を行いながら、対応に遅れが出ないよう努めています。例えば、一部の事業所では対象者の確認やシステム改修のための追加作業が必要であるため、対応に時間を要するケースもあります。この場合、労働局は協定改定に向けた案内や要請を実施し、派遣元事業所が適切な支援を受けられるよう、引き続き支援策を講じています。

今回の労使協定改定のプロセスでは、過半数労働組合または過半数労働者代表との協議が重要です。この協議の中で、賃金水準の引き上げ幅が算定され、協定が締結された後は、労働者へ周知し、給与再計算や差額支払いなどが行われます。また、給与システムへの新しい賃金水準の入力や給与明細の再発行なども含まれるため、企業側には多岐にわたる実務負担が生じることが指摘されています。このため、労働局では改定をスムーズに進めるための支援策の提供を行っています。支援策には、人材確保等支援助成金(派遣元特例コース)の利用奨励も含まれ、これによって派遣労働者の賃金水準維持が図られています。

さらに、地域指数の算定誤りを背景に、再発防止策も講じられました。具体的には、ICT技術の導入によるヒューマンエラーの排除や、外部業者を活用したベリファイ方式による数値の正確性の確保が挙げられます。ICTの導入により、担当者がハローワークシステムから必要なデータを正確に抽出できるデジタルツールが開発され、効率化が進められています。これに加えて、各数値の算定作業を担う外部業者によるデータの検証により、発表する数値の正確性が確保されています。このほか、業務効率化に向けたダブルチェック体制の強化も進められており、複数の担当者が同じデータを確認することで、地域指数の誤りや作業の不備を防止しています。また、業務の重要な手順ごとにマニュアルが整備されており、室長級職員による統括管理のもとで運用が行われています。

改定のフォローアップに関しても、事業所の進捗状況を見ながら都道府県労働局が引き続き支援を行います。特に、対象者の確認に時間を要する事業所に対しては、労使協定の改定にかかる諸経費のサポートを含む支援策の活用を提案し、事業所が抱える課題の早期解決を目指しています。このほか、派遣元事業所が派遣先との派遣料金見直し協議や派遣労働者からの問い合わせ対応に時間を割くことが求められる場合、労働局が個別に相談を受け付け、具体的な支援を提供しています。

なお、労使協定の改定に関連する業務は令和6年度内に集中して実施される見込みで、企業に対するフォローアップや支援策の提案は年度末まで継続される予定です。例えば、退職した労働者との連絡方法や人事労務担当者の業務負担に関する支援策が提供されており、これにより円滑な改定が可能となるよう配慮されています。また、派遣元事業所における改定作業においては、システム経費などの費用がかかるケースが多いため、企業にとってはこれらの支援策が負担軽減に繋がる重要な要素となっています。

これらの支援策は、派遣労働者の労働環境の向上と、派遣元事業所の法的な対応の円滑化を目的としています。派遣元事業所が迅速に労使協定を改定することは、企業と労働者の信頼関係の維持に不可欠であり、厚生労働省は今後も適切な支援を提供する方針です。労働市場の変化に伴い、派遣労働者の待遇改善が求められる中、企業側の積極的な対応が一層求められます。派遣元事業所に対する支援と監督は引き続き行われ、派遣労働者の安心と安定を守るための体制が整備されていくことが期待されています。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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