2024年9月15日
労務・人事ニュース
労働争議が前年比8.1%増加、令和5年の総参加人員は101,253人
令和5年労働争議統計調査の概況 労働争議の種類別の状況(厚労省)
令和5年の労働争議に関する詳細な報告によると、労働争議の件数および参加人員が前年に比べて増加していることが明らかになりました。このデータは、日本の労働市場における労働者の不満や要求が顕在化している状況を示しており、企業の採用や人事戦略にも影響を及ぼす可能性があります。
令和5年の「総争議」の件数は292件で、総参加人員は101,253人に達しました。前年と比較して、件数は22件(8.1%増)、総参加人員は47,734人(89.2%増)と大幅に増加しました。これまで「総争議」の件数は長期的に減少傾向にありましたが、令和元年以降はほぼ横ばい状態が続いています。しかし、令和5年には再び増加に転じたことが特徴的です。このような増加傾向は、労働者の要求が強まり、企業側との対立が深刻化している可能性を示唆しています。
さらに、争議行為を伴う争議の件数は75件で、行為参加人員は8,414人となりました。これも前年に比べて、件数が10件(15.4%増)、行為参加人員が1,967人(30.5%増)と増加しています。争議行為を伴わない争議も含めると、総争議の中で争議行為を伴うものの割合が増加していることがわかります。これは、労働者がより積極的に権利を主張し、場合によってはストライキやその他の争議行為を選択するケースが増えていることを示しています。
企業にとって、このような労働争議の増加は大きなリスク要因となり得ます。労働争議が頻発する職場では、生産性の低下や企業イメージの悪化が避けられません。また、労働争議は労働者の士気にも影響を与え、採用活動や従業員の定着にも悪影響を及ぼす可能性があります。特に、争議行為を伴う労働争議が増加している状況では、企業は労働環境の改善や労働者とのコミュニケーションの強化が求められます。
一方で、争議行為を伴わない争議も依然として多く発生しており、令和5年には217件の争議行為を伴わない争議が報告されました。このタイプの争議では、労使双方が対話を重視し、争議行為に至る前に問題解決を図る姿勢が見られます。企業にとっては、このような争議を未然に防ぐための労働環境の整備が求められます。従業員が抱える不満や問題を早期に察知し、適切に対応することで、争議行為の発生を防ぐことが可能です。
労働争議の増加は、特に中小企業にとって大きな課題となるでしょう。中小企業では、限られたリソースの中で労働者との交渉や問題解決を行う必要がありますが、その一方で、労働争議が発生すれば、経営に直結する影響を受ける可能性が高まります。従業員一人ひとりの声に耳を傾け、早期に対策を講じることが、労働争議の発生を抑えるために重要です。
また、労働争議の発生には、経済的要因も影響を与えていると考えられます。物価上昇や賃金の停滞が続く中で、労働者が生活の質を維持するために賃上げを求める動きが強まっていることが背景にあると考えられます。特に、賃金に関する争議は企業にとって避けられない問題であり、適切な賃金政策を設計することが求められます。
令和5年の労働争議のデータは、労働者が自らの権利を守るために積極的な行動を取る傾向が強まっていることを示しています。企業は、こうした動向を踏まえた上で、労使関係の健全化を図ることが重要です。従業員との信頼関係を構築し、労働環境の改善を進めることで、労働争議を未然に防ぎ、企業の持続的な発展を支える基盤を強化することが求められます。
これからの労使関係においては、対話と協力が重要な鍵となるでしょう。企業は、労働者の声に耳を傾け、共に問題解決に取り組む姿勢が求められます。特に、争議行為を伴う労働争議が増加している現状では、労使双方が対立を深めるのではなく、協力して解決策を模索することが必要です。労働者の要求に真摯に向き合い、共通の目標に向かって共に歩むことが、労働争議を防ぎ、健全な労使関係を築くための鍵となるでしょう。
このような背景から、企業は労使関係の健全化に向けた取り組みを一層強化する必要があります。労働者が安心して働ける環境を整え、企業の持続的な成長を支えるためには、労使双方が信頼と協力を基盤にした関係を築くことが不可欠です。これからの時代において、企業は労働者との関係を再構築し、共に発展していくことが求められています。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ