2024年8月1日
労務・人事ニュース
労働市場の健全化に向けた課題が浮き彫りに!令和6年労働局報告書が指摘するお祝い金制度の問題点
第372回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 資料2-3 募集情報等提供事業者によるお祝い金等の提供事例について(厚労省)
令和6年7月24日、職業安定局需給調整事業課より、募集情報提供事業者によるお祝い金等の提供事例に関する報告が発表されました。この報告は、都道府県労働局に寄せられた相談事例を基にしたもので、令和5年2月から令和6年6月までの期間における具体的な事例が取り上げられています。この報告書は、現在の労働市場における様々な問題を浮き彫りにしており、今後の対応策を検討するための重要な資料となっています。
まず、近畿地方の薬局経営者からの相談では、お祝い金目当てで転職する薬剤師が増加していることが報告されています。これにより、人材確保が困難になり、採用コストが増加しているという問題が指摘されています。同様の問題は他の薬局でも見られ、お祝い金制度の是正が求められています。
関東地方では、弁護士や紹介事業者から、特定の募集サイトにおける就職お祝い金の表記が適法かどうかについての問い合わせが多く寄せられています。このような報告が多いことから、法令の範囲内での適切な運用が求められていることがわかります。
応募者からの相談では、特定の募集サイトで「勤続●●●」という名称の「お祝い金」に関する表示が多数あり、厚生労働省がこの実態を把握し行政指導を行うべきだとの意見が寄せられています。また、別の募集サイトを通じて採用した●●士に対し、就職後も転職情報のメールが届き続けていることについて、法令違反の可能性があるため指導を求める声もありました。
他の事例では、関東地方の募集者から、某求人サイトがサービス利用者を集めるために「お友達紹介キャンペーン」と称して金品等を提供していることが報告されました。このようなキャンペーンが、就職お祝い金の禁止に抵触する可能性があるため、法的な取り締まりが求められています。
北海道・東北地方の募集者からは、人材会社を利用した際の高額な手数料に関する相談がありました。この募集者は、採用手数料として●●万円を支払ったが、その後、応募者に対しても支度金として●●万円が渡されていたことに不満を示しています。こうした事例からも、手数料の透明性と公平性が求められていることがわかります。
関東地方では、募集者からの相談で、某事業者が運営する募集サイトを通じて応募者を面接し不採用としたが、後日直接応募者から連絡があり再度面接して採用した結果、利用規約違反としてアカウント停止や違約金の支払いを求められた事例が報告されています。このような事例は、募集サイトの利用規約や運用方法の見直しが必要であることを示唆しています。
さらに、関東地方の募集者からは、募集サイトを通じてスタッフを1名採用したが、約2ヶ月経過後に退職し、採用手数料の返金が行われなかった事例が報告されています。こうした事例は、採用後のフォローや手数料の返金ポリシーの明確化が求められています。
中部地方の募集者からは、応募者が複数の募集サイトを利用している場合の手数料支払いに関する問題が報告されています。例えば、あるサイト経由で応募者を採用したが、他のサイトからも手数料を請求されるといったケースがあり、こうした重複請求に対する対応が必要です。
その他にも、関東地方の募集者からの相談で、募集サイトに掲載されている「入社お祝い金」が法令上禁止されていないかとの疑問が寄せられています。このような疑問に対する法的な明確化が求められています。また、募集者がハローワークからの応募を受け入れた後、別のサイトからの応募者とされた場合の混乱も報告されています。
以上のような事例から、募集情報提供事業に関する様々な問題が浮き彫りになっています。これらの問題に対しては、法令の整備や運用の見直しが必要であり、労働市場の健全化を図るための取り組みが求められています。具体的には、手数料の透明性確保やお祝い金制度の適切な運用、応募者と募集者の権利保護などが重要な課題となっています。
令和6年の報告書は、今後の労働政策の改善に向けた貴重な資料となり、労働市場の公正性と透明性を確保するための基盤を提供しています。この報告を基に、関係機関や企業が協力して、より良い労働環境の実現に向けた取り組みを進めていくことが期待されます。
参考:資料2-3 募集情報等提供事業者によるお祝い金等の提供事例について(厚労省)
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ