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2024年8月6日

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労働市場の変化と賃上げに向けた取り組み:ミスマッチ解消とリスキリングの重要性

白書等(経済財政白書、世界経済の潮流、地域課題分析レポート等)(内閣府)

2022年から2023年にかけての日本経済は、世界的な物価上昇や円安の影響を受けながらも、民需を中心に緩やかな回復を見せました。しかし、これには多くの課題が存在します。物価上昇の主要因は輸入物価の上昇であり、国内の需給や賃金からの上昇圧力は限られています。2023年に向けて、内需の振興が重要視され、特に成長分野への投資喚起と人的資本投資の促進が鍵となります。

個人消費については、物価上昇による実質所得の減少が影響し、特に低所得層では実質消費支出が減少傾向にあります。消費の持続的な回復には、賃金上昇を伴う定期収入の増加が不可欠です。若年層と高齢層の消費性向は低下傾向にあり、これには期待生涯所得の伸び悩みや老後の生活不安が背景にあります。構造的な賃上げ環境の構築と高齢者の就労促進が求められます。

2022年の雇用環境は改善しましたが、労働移動の活発化はコロナ禍前ほどではなく、失業期間の長期化が懸念されています。国際的には、労働移動が円滑な国の賃金上昇率が高く、自発的な転職による賃金や意欲の上昇が見られます。リスキリングの強化やマッチング効率の改善が課題です。

企業部門では、製造業を中心に収益の回復が続き、円安による収益増加もあり、大中堅企業を中心に設備投資が回復しました。しかし、実質ベースでの投資の回復は道半ばであり、今後は成長分野での予見可能性と期待成長率を高め、投資を引き出すことが重要です。経常収支の黒字要因は貿易から投資へとシフトしており、特に直接投資が重要な役割を果たしています。

輸出に関しては、中小企業への人材支援や農林水産物・食品の輸出支援体制の整備が求められます。エネルギー構造の転換を進めることで、輸入物価上昇の影響を軽減し、交易条件の改善を図ることが必要です。

労働市場の変化については、失業率の低下と名目賃金の緩やかな持ち直しが見られますが、実質賃金は交易条件の悪化により下押しされています。労働生産性の伸びを高めるためには、労働市場のミスマッチ改善が不可欠です。新規求人の戻りが弱く、長期失業者の増加が見られます。労働市場の仲介機能を高めることが重要です。

自発的な転職による賃金や意欲の上昇効果が見られ、リスキリングの強化や非正規雇用の正規化が求められます。最低賃金引き上げは非正規雇用者の時給を底上げする効果がありますが、主稼得者以外の就業時間が短い層が増加しており、所得引上げに向けた制度の見直しが必要です。

企業の収益動向については、製造業が牽引する形で回復が続き、設備投資の回復も進んでいますが、物価上昇の中で実質ベースでの投資の回復は道半ばです。企業の高付加価値志向を反映し、輸出増加の主因が数量から価格へと変化しています。貿易収支の安定化には、エネルギー構造の転換が重要です。

サービス貿易の成長が遅れており、デジタル関連の競争力強化が必要です。直接投資収益の拡大が見られ、対外純資産残高は堅調に増加していますが、こうした収益力は大中堅企業に偏在しています。中小企業の輸出促進に向けて、人材面やマーケティング支援、越境ECの活用拡大が重要です。

以上の課題を克服し、日本経済が持続的に成長するためには、成長分野への重点的な投資、人的資本投資の促進、労働市場のミスマッチ改善、企業の高付加価値志向の強化、エネルギー構造の転換、デジタル関連の競争力強化、中小企業の輸出促進支援などが求められます。これらの取り組みを通じて、内需振興と持続的な成長を実現することが期待されています。

参考:日本経済2022-2023―物価上昇下の本格的な成長に向けて―(令和5年2月3日)概要

⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ

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