2024年12月30日
労務・人事ニュース
労働市場の安定化が進行中!令和6年上半期の入職率9.0%、離職率8.4%を詳しく分析
令和6年上半期雇用動向調査結果の概要(厚労省)
令和6年12月20日、厚生労働省は令和6年上半期における「雇用動向調査」の結果を発表しました。この調査は、全国の主要産業における入職者数や離職者数、年齢層、性別、離職理由などを把握する目的で行われるもので、今回の調査期間は令和6年1月から6月までを対象としています。調査は、常用労働者を5人以上雇用する事業所15,074箇所を無作為に抽出し、そのうち9,024箇所から有効回答を得た上で集計が行われました。今回の結果には、入職者39,651人、離職者42,497人のデータが含まれています。
調査の結果、全体的な入職率および離職率が前年同期と比較して低下していることが明らかになりました。入職率は9.0%で、前年同期比0.7ポイント低下。一方、離職率は8.4%で0.3ポイント低下しました。また、入職率が離職率を上回る「入職超過率」は0.6ポイントとなり、前年同期から0.4ポイント縮小しています。このような結果は、労働市場が安定傾向にあることを示唆しており、特に企業側が労働者の定着を促進するための取り組みを強化している可能性が指摘されます。
産業別に見ると、一般労働者とパートタイム労働者で入職率と離職率に大きな差異が見られました。例えば、一般労働者の場合、宿泊業や飲食サービス業では入職率が12.9%、離職率が10.9%となっており、比較的高い水準にあることがわかります。一方、パートタイム労働者の同じ業種における入職率は18.3%、離職率は17.9%で、流動性がさらに高いことが確認されています。この背景には、雇用形態や勤務時間の柔軟性が影響していると考えられます。教育や学習支援業でも同様の傾向が見られ、一般労働者の入職率は17.0%、離職率は15.6%と、高い労働移動が特徴です。
さらに注目されるのは、転職入職者の賃金変動に関するデータです。前職よりも賃金が「増加」した割合は40.0%で、前年同期比で1.4ポイント上昇しました。これに対し、「減少」した割合は28.9%で、4.3ポイント低下しています。この結果は、転職が賃金上昇の契機となっていることを示しており、企業が優秀な人材を確保するために賃金条件を改善している動きが浮き彫りになっています。
この調査結果は、企業の採用戦略や人材定着施策を見直す上で重要な指針を提供しています。特に入職率と離職率の低下傾向は、労働市場の競争が緩和されている可能性を示唆しており、企業が採用に際して求める条件や待遇の見直しを行う必要性を反映しています。一方で、特定の業種や雇用形態で高い流動性が続いていることから、これらの分野における労働環境の改善も引き続き課題となります。企業が優秀な人材を確保し、定着させるためには、賃金だけでなく、働きやすさやキャリアアップの支援など、総合的な対応が求められるでしょう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ