2025年3月13日
労務・人事ニュース
労働者総数50,814千人に対する入職率2.04%と離職率1.94%(毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報)
毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報 第3表 常用雇用及び労働異動率(厚労省)調査 産業計
令和6年の「毎月勤労統計調査」によると、調査産業計における労働者総数は50,814千人となり、前年と比較して増加しました。この数字は、国内の労働市場全体の規模や雇用の安定性を示す重要な指標の一つであり、企業の採用動向や労働市場の流動性を読み解くうえで欠かせないデータです。
特に注目すべきなのは、パートタイム労働者の比率の変化です。最新の調査によると、調査産業計におけるパート比率は30.86%となり、前年と比較して0.51ポイント上昇しました。この増加傾向は、企業が雇用の柔軟性を高めるためにパートタイム労働者を積極的に採用している可能性を示唆しています。特に小売業やサービス業においては、繁閑の波に応じて柔軟な雇用形態を導入する動きが見られるため、このような傾向は今後も続くことが予想されます。一方で、パート比率の増加が正社員の採用減少につながるのか、それとも企業がより多様な雇用形態を取り入れているのかについては、さらなる分析が必要です。
また、労働市場の流動性を示す指標として入職率と離職率の推移も重要です。調査産業計における入職率は2.04%となり、前年と比較して0.1ポイント低下しました。一方で、離職率は1.94%となり、前年と比べて0.07ポイント減少しています。これらの数字は、企業の採用意欲の変化や、従業員の雇用維持の状況を把握するうえで重要なデータとなります。
入職率の低下は、企業側の採用活動の慎重化を示している可能性があります。経済環境の変化や業績の影響を受けて、新規採用を抑える動きが出ているかもしれません。また、求職者の動向にも影響を受けるため、労働市場全体として転職を希望する人の割合が減少している可能性も考えられます。一方で、離職率の減少は、企業が従業員の定着率向上に向けた施策を進めた結果ともいえるでしょう。特に、従業員満足度の向上や働きやすい環境の整備が進められたことが、離職率低下に寄与していると考えられます。
これらのデータを基に、企業の採用担当者はどのような戦略を取るべきでしょうか。まず、パート比率の上昇を踏まえたうえで、正社員とパートタイム労働者のバランスを考慮した採用計画を立てることが求められます。特に、パートタイム労働者の増加が業務の流動性を高める一方で、安定的な人材確保の観点からは、正社員の採用と育成も引き続き重要となります。企業としては、労働力の確保に向けて、フルタイムとパートタイムの両方の雇用形態を適切に活用し、業務の効率化を図ることが求められるでしょう。
次に、入職率の低下と離職率の低下を踏まえた対応策について考えます。企業にとって新規採用のハードルが上がる中、既存の従業員の定着率向上がより重要になってきています。そのため、職場環境の改善やキャリアパスの明確化、スキルアップの機会提供などがカギとなります。特に、テレワークの導入や柔軟な働き方の推進は、従業員の満足度向上に寄与する可能性が高く、結果として離職率のさらなる低下につながるでしょう。
また、業界ごとの雇用動向を踏まえた人材確保の戦略も欠かせません。例えば、製造業では労働者総数が減少しており、人材不足が深刻化している可能性があります。このような業界では、採用活動の強化だけでなく、既存従業員のスキルアップや生産性向上に向けた取り組みが必要となります。一方で、建設業では入職率が1.36%と低めであるため、若手人材の確保が重要課題となります。そのため、研修制度の充実や未経験者向けの採用枠の拡充といった施策を講じることが効果的でしょう。
令和6年の雇用統計は、企業にとって多くの示唆を与える内容となっています。特に、採用活動の見直しや人材定着施策の強化を進めることで、企業の競争力向上につなげることができます。今後も労働市場の動向を注視しながら、柔軟な雇用戦略を立て、持続可能な人材確保を進めていくことが求められるでしょう。企業にとって、優秀な人材の確保と育成は今後も最優先課題であり、労働市場の変化に対応するための適切な対策が必要となります。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ