2024年9月3日
労務・人事ニュース
令和6年7月 栃木県 有効求人倍率(季節調整値)は1.15倍
「労働市場のようす(令和6年7月の求人・求職の取扱状況)」を発表します。(栃木労働局)
栃木県の雇用情勢は、令和6年7月のデータによれば、依然として不安定な状況が続いているものの、一部では持ち直しの兆しも見られます。今回のデータでは、求人数や求職者数、雇用保険の受給者数に関する動きが詳細に報告されており、県内の経済状況や労働市場の現状を浮き彫りにしています。
まず、有効求人倍率(季節調整値)は1.15倍となり、前月より0.03ポイント上昇しました。これは、前月に比べて有効求人数が0.3%増加し、有効求職者数が2.2%減少した結果として、求人倍率が改善したことを示しています。有効求人倍率が上昇したことは、企業側の求人意欲が高まっていることを示唆していますが、求職者数の減少は、求職活動を行う人々が減少している可能性を示しており、依然として労働市場には課題が残されています。
新規求人倍率も前月から0.08ポイント増加し、2.10倍となりました。この指標は、企業が新たに求めている労働力の数と、新たに求職活動を始めた人々の数との比率を示しており、前月比で新規求人数が4.1%増加したことが主な要因となっています。新規求職者数も0.3%増加しているものの、求人倍率の上昇は企業の採用意欲が依然として強いことを反映しています。
栃木県内の産業別に見ると、製造業が特に注目されます。製造業は前年同月比で5.6%増加しており、これは16ヵ月ぶりの増加となります。この増加は、県内の製造業が徐々に回復基調にあることを示しており、地域経済にとって良い兆候といえるでしょう。一方で、運輸業や郵便業、卸売業、小売業、宿泊業、飲食サービス業など、他の産業では依然として厳しい状況が続いています。特に運輸業、郵便業に関しては、前年同月比で13.3%減少しており、11ヵ月連続で減少が続いています。このような減少傾向は、物流や郵便業界全体の需要低下を反映しており、関連企業にとっては厳しい経営環境が続いていることが伺えます。
また、雇用保険の受給者数についても報告がなされています。令和6年7月のデータでは、雇用保険受給資格決定件数が前年同月比で10.3%増加し、受給者実人員は7.3%増加しました。これは、失業者が増加していることを示しており、依然として雇用環境が完全には回復していないことを示唆しています。受給者数の増加は、失業期間が長引いている人々が増えている可能性もあり、これが長期的な経済的影響を及ぼす可能性があります。
一方で、新規求人数の増加は一部の業界での採用活動が活発化していることを示していますが、それが全体の雇用環境を改善するには至っていない現状も見逃せません。栃木県の雇用情勢は、特定の産業においては回復基調が見られるものの、依然として不安定であり、特にサービス業や流通業のようなセクターでは厳しい状況が続いています。これらの業界は、人々の日常生活に直結しているため、雇用情勢の悪化は消費者心理にも影響を及ぼし、さらなる景気低迷を招く可能性があります。
また、県内の正社員求人倍率も注目すべきポイントです。令和6年7月のデータでは、正社員求人倍率は0.99倍となり、前月から0.01ポイント上昇しています。これは、正社員として働くことを希望する人々に対する求人の割合を示しており、依然として正社員の求人が十分ではないことを意味しています。非正規雇用が増加している現状は、雇用の質に関する問題を浮き彫りにしており、安定した雇用を求める求職者にとっては依然として厳しい状況が続いています。
総じて、栃木県の雇用情勢は一部の産業で持ち直しの兆しが見られるものの、全体的には依然として不安定な状況が続いています。物価上昇や経済環境の変動が今後の雇用にどのような影響を与えるか、また、県内企業がどのようにしてこの状況を乗り越えるのかが注目されます。特に、製造業の回復が地域経済にどのような影響を与えるか、今後の動向を注視する必要があります。
このような背景を踏まえると、栃木県においては、持続的な経済成長を実現するために、産業の多様化や雇用の質の向上が求められています。県内の労働市場の安定化には、政府や地方自治体の適切な支援策が不可欠です。また、企業側も、労働環境の改善や人材育成に積極的に取り組むことが求められています。これにより、雇用の質と量の両面での改善が期待され、ひいては地域全体の活性化につながるでしょう。
栃木県の製造業、16ヵ月ぶりの回復で新規求人が5.6%増加
栃木県の労働市場に影響を与える要因は複数あり、それぞれが県内の経済や雇用情勢に大きな影響を及ぼしています。これらの要因を理解することで、栃木県の労働市場の現状と今後の課題をより深く掘り下げることができます。
まず、製造業の動向が栃木県の労働市場に大きな影響を与えています。県内の製造業は長らく地域経済の基盤を支えてきましたが、最近ではその回復基調が顕著になってきています。令和6年7月のデータによれば、製造業の新規求人は前年同月比で5.6%増加しており、16ヵ月ぶりの増加に転じています。これは、国内外の需要の回復や供給チェーンの安定化が寄与していると考えられます。製造業の回復は、関連する中小企業やサービス業にも波及効果をもたらし、地域全体の雇用創出に寄与することが期待されています。
次に、人口動態の変化も労働市場に大きな影響を与えています。栃木県では少子高齢化が進行しており、労働力人口の減少が懸念されています。この現象は、特に若年層の流出が顕著であり、都市部への移住が進んでいることが背景にあります。これにより、地元企業が労働力を確保するのが難しくなり、求人倍率が上昇する一方で、求職者数の減少という状況が生まれています。特に、正社員の求人倍率が依然として低いことは、安定した雇用を求める若年層が県外に流出する一因となっています。
さらに、物価上昇や生活費の増加も労働市場に影響を与えています。近年、物価の上昇は全国的な問題となっており、栃木県でもその影響は無視できません。生活費の増加は、賃金上昇と相まって、企業の経営負担を増大させ、採用意欲にブレーキをかける要因となり得ます。また、生活費の高騰は、地域住民の購買力を低下させ、消費活動が縮小することにつながります。これが結果的に、サービス業や小売業の業績に悪影響を及ぼし、雇用創出の機会を減少させることになります。
地域経済の依存度が高い産業の変動も重要な要因です。栃木県は農業、観光業、サービス業などが地域経済を支える主要産業ですが、これらの産業は外部環境の変動に敏感です。例えば、観光業はパンデミックの影響で大きな打撃を受けましたが、現在は徐々に回復しつつあります。しかし、観光業の回復にはまだ時間がかかると予想されており、その間、観光業に依存する地域では雇用機会が限定される可能性があります。
一方で、県内のインフラ整備や都市開発も労働市場に影響を与えています。新しい交通インフラの整備や都市部の再開発プロジェクトは、建設業や関連サービス業に新たな雇用を生み出す可能性があります。これにより、地元の雇用環境が改善され、若年層の定住促進にもつながることが期待されています。
以上のように、栃木県の労働市場には多くの要因が複雑に絡み合っており、それぞれが地域経済や雇用情勢に対してさまざまな影響を及ぼしています。これらの要因を総合的に考慮し、持続可能な地域経済の発展に向けた対策が求められています。
⇒ 詳しくは栃木労働局のWEBサイトへ