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2025年4月16日

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労務費の価格転嫁が3割未満にとどまる現実、労務コスト交渉に精通したバイヤー職のニーズが急上昇(令和6年度食品等流通調査報告書)

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令和6年度食品等流通調査報告書の公表について(農水省)

令和6年度の食品等流通調査は、農林水産省が食品流通を巡る現場の実態と課題を明らかにするために実施したもので、特に近年深刻化する物流の課題や取引の公正性、環境への配慮、そして業界内のデジタル化の進展状況を中心に幅広く分析されている。本調査は、全国の食品製造業者や卸売業者、小売業者、外食産業、さらには農業法人、物流事業者など594の事業者に対するアンケートおよび105者に対するヒアリング調査によって構成されており、そのデータは実務に即した内容で、企業活動や政策提言の根拠として活用価値が高い。

まず価格転嫁の実態から見ると、原材料費やエネルギーコスト、物流費の上昇に対しては、事業者間で一定程度の価格交渉が進んでいる様子がうかがえる。食品製造事業者のうち79.6%が原材料費について「協議ができた」と回答し、物流費についても66.9%が同様の回答をしている。しかしながら、労務費に関しては52.3%にとどまっており、他のコスト項目に比べて価格転嫁が進みにくいことが明らかとなった。また「概ね反映できた」との回答は原材料費で47.4%、物流費で31.5%に達した一方、労務費では27.0%に過ぎなかった。この差異は、労務費の上昇が構造的な問題であるにもかかわらず、価格交渉の根拠として業界内での受容が進んでいない現状を浮き彫りにしている。

物流に関する調査では、いわゆる「2024年問題」への対応が急務となっている。トラック予約システムの導入により、かつては3~4時間にも及んでいた荷待ち時間が30分未満にまで短縮された事例も報告されており、効率化の成果が見え始めている。一方で、トラック予約が早い者勝ちで取りにくい、また予約時間通りに到着しても人手不足により待たされるといった声もあり、現場レベルでの調整やインフラ整備の遅れが課題として残っている。また物流費の価格転嫁については、製造業者の66.2%、卸売業者の75.4%、小売業者の66.7%が「概ね反映した」と回答しており、物流費については他コスト項目よりも転嫁しやすい傾向が見られた。

商慣習の見直しおよびデジタル化の分野では、納品期限に関する「1/3ルール」から「1/2ルール」への緩和が部分的に進んでいるものの、まだ業界内での統一感は薄い。食品製造業者では「全商品が1/2ルール」との回答がわずか8.3%であり、半分以上が依然として1/3ルールに縛られている。対照的に小売業者側では「全ての商品が1/2ルール」との回答が約20%、「半分以上の商品が1/2ルール」との回答が30%を超えており、納品側と発注側でルールの認識に大きなギャップがあることが分かった。また、納品伝票の電子化に関しては、小売業者の91.7%が「電子化が進んでいる」と回答している一方で、食品製造業者では27.1%、卸売業者では31.1%と、発注側と納品側で導入状況に大きな差が見られた。

環境配慮の取り組みとしては、プラスチック削減や食品ロス削減、食品リサイクルなどの重要性が認識されているが、実施の進捗は限定的である。プラスチック使用に対する規制や代替資材への転換に伴うコスト増加がネックとなっており、多くの事業者が対応に苦慮している。また、未利用食品の寄付については、約4割の事業者が取り組んでいる一方で、2割の事業者は「未利用食品を保有しているが寄付は行っていない」と回答しており、社会貢献と業務効率の両立という観点で課題が残っている。

さらに、生鮮食品における取引の適正化についても注目すべき変化がある。「生鮮取引適正化ガイドライン」の認知度は小売業者で7割、仲卸業者では4割と、流通段階での情報格差が明らかになった。しかしながら、仲卸業者の7割が「取引が改善した」と感じているのに対し、小売業者の7割は「改善が必要な取引はない」と認識しており、改善の実感と課題認識に乖離がある。このことは、ガイドラインの更なる周知と活用が求められていることを示唆している。

こうした実態を踏まえると、今後の食品流通業界では、労務費を含むコスト構造の見直しや価格転嫁の制度化、物流の効率化と平準化、商慣習の是正と電子化の推進、さらには環境配慮と社会的責任への対応が一体的に求められる。そしてこれらの対応を進めるためには、業務の可視化とデジタルシフト、さらにサステナビリティを重視した長期的戦略の立案が不可欠であり、それを担う専門人材の採用と育成が今後ますます重要になる。

⇒ 詳しくは農林水産省のWEBサイトへ

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