2024年12月15日
労務・人事ニュース
北米進出日系企業の66.2%が黒字見込みを達成、新型コロナ禍前水準を突破した背景とは
ジェトロ 2024年度 海外進出日系企業実態調査(北米編)(JETRO)
日本貿易振興機構(ジェトロ)が実施した2024年度「海外進出日系企業実態調査(北米編)」は、米国とカナダに進出する日系企業の経営実態と市場環境の動向を詳細に分析したものです。今回の調査では、両国に進出する日系企業1,826社を対象にオンラインアンケートを実施し、774社から有効な回答が得られ、有効回答率は42.4%でした。この調査は日系企業の海外展開を支援し、日本企業の戦略立案や政策形成に役立てる目的で毎年実施されており、米国では43回目、カナダでは35回目の実施となります。
調査結果では、2024年の営業利益について、米国では66.2%、カナダでは73.8%の企業が黒字を見込んでおり、特に米国では2019年の新型コロナウイルス感染症以前の水準を上回る結果となりました。このような業績の回復は、経済活動の正常化と市場需要の増加が主な要因と考えられます。さらに、今後1~2年の事業展開について、両国とも約半数の企業が拡大を予定しており、特に米国ではカリフォルニア州やテキサス州の他、中西部や南東部の地域での拡大が期待されています。
競争環境の変化に関しては、米国とカナダともに、約3割の企業が競合の増加を報告しました。一方で、米国の36.2%、カナダの48.1%の企業が市場シェアの拡大に成功しています。米国では競争上の課題として59.6%がコスト競争力を挙げ、製品やサービスの開発、営業活動の強化、コスト削減といった対策を講じています。カナダではブランドや知名度が課題として挙げられ、営業や広報活動の強化が最も重要な対応策として選ばれています。
労務面では、賃金上昇や人材不足が経営課題として浮上しています。特に米国とカナダの両国で、従業員の賃金水準の上昇が最大の課題となり、これに対応するため多くの企業が既存社員の賃金引き上げを行っています。一方で、雇用確保の難しさや人材の質、定着率の向上といった課題にも直面しており、特に専門職や工場作業員の人材不足が顕著です。高齢化による知識の継承が難しくなっている点も企業にとって深刻な課題となっています。
サプライチェーンの見直しについては、米国とカナダの両国で、調達先の変更先として最も多く選ばれたのは拠点国内でした。現地調達の推進は顕著で、特に米国では中国からASEANへの調達シフトが進行しています。一方、メキシコへの調達先変更は前年に比べて減少しており、現地でのサプライチェーン集約が重要視されています。生産に関しても、米国内での現地生産が全体の64.4%を占めており、日本国内での生産は縮小しています。これらの動きは、コスト効率の改善とサプライチェーンの効率化を目指す企業の取り組みを反映しています。
ジェトロの調査結果は、北米市場における日系企業の現状と課題を明確に示しており、特に経済環境の変化に迅速に適応するための柔軟な戦略が求められています。米国とカナダの市場での成功には、競争力の向上や雇用問題への対策、サプライチェーンの最適化が不可欠です。この調査結果は、今後の企業戦略を立てる際に有用な情報として活用できるでしょう。
また、調査では2024年度以降の見通しについても示唆がなされています。営業利益の見込みや競争環境、労務問題、サプライチェーンの見直しといった具体的なデータは、企業が北米市場での活動を拡大し、成功するための重要な参考資料となります。企業にとっては、これらのデータを活用し、今後の経営戦略に反映させることが、持続可能な成長を実現する上で欠かせないといえます。
⇒ 詳しくは独立行政法人日本貿易振興機構のWEBサイトへ