2025年3月12日
労務・人事ニュース
医療・福祉業の平均月間実労働時間は129.7時間!前年比0.5時間減(毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報)
毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報 第2表 月間実労働時間及び出勤日数(厚労省)医療 福祉
令和6年の毎月勤労統計調査によると、医療・福祉業の平均月間実労働時間は129.7時間で、前年比0.5時間の減少が確認された。この減少は、業界全体での労働時間短縮の取り組みが進んでいることを示しているが、それでも他の業界と比べると依然として長時間労働が続いている状況が見られる。医療・福祉業界は、病院、診療所、介護施設、福祉施設などを含み、24時間体制での業務が求められる職種が多いため、労働時間の適正化が業界全体の課題となっている。
内訳を詳しく見ると、所定内労働時間は124.7時間で、前年比0.6時間の減少となった。この減少は、医療機関や介護施設においても働き方改革の影響が出始めていることを示している。特に、大手医療機関や先進的な介護施設では、シフトの最適化やタスクシェアの導入が進み、従業員の負担軽減に向けた取り組みが進んでいる。一方で、慢性的な人手不足が続いているため、施設の規模や地域によっては十分な労働環境の改善が進んでいないケースも多い。
一方、所定外労働時間(残業時間)は5.0時間で、前年比0.8時間の減少が見られた。このデータから、医療・福祉業では残業時間の削減が進んでいることが分かる。特に、医療現場では、電子カルテの導入や業務のデジタル化が進み、記録作業の負担軽減が実現されつつある。また、介護業界では、介護ロボットの導入や、タスクの分担を進めることで、従業員の負担軽減が進んでいる。ただし、急患対応や突発的な業務が発生しやすい医療機関では、依然として残業が発生するケースが多く、完全な残業削減にはまだ時間を要する状況にある。
月間出勤日数については、17.5日で前年と変動はなかった。このデータから、医療・福祉業では出勤日数が安定していることが分かる。特に、医療機関や介護施設は24時間体制での業務が求められるため、交代制勤務を導入しているところが多く、大幅な出勤日数の減少は難しいのが現状である。一方で、一部の介護施設や訪問介護サービスでは、フレックスタイム制や週休3日制の導入が試験的に進められており、今後の働き方改革の進展によって出勤日数の変動が見られる可能性がある。
企業の採用担当者にとって、このデータが示すポイントは、労働時間の短縮が進む中で、どのように人材確保と業務効率化を両立させるかという点にある。医療・福祉業は、慢性的な人手不足が深刻化している業界の一つであり、労働環境の改善と賃金水準の見直しが求められている。そのため、企業は給与体系の見直しや、福利厚生の充実を進めることで、人材確保に努めることが重要になる。
また、今後の課題として、労働時間の適正化と業務負担の均等化が求められる。特に、医療機関では、医師や看護師の負担が大きく、一部のスタッフに業務が偏る傾向があるため、業務の分担と支援体制の強化が必要となる。一方で、介護業界では、高齢化社会の進展により、サービスの需要が拡大しているため、介護職員の働きやすさを向上させる取り組みが今後の重要な課題となる。
今後の展望として、医療・福祉業はデジタル技術の発展により、さらなる業務効率化が進むことが予想される。特に、AIを活用した診療支援システムや、ロボットによる介護支援が普及することで、従業員の負担軽減が実現される可能性がある。一方で、業務の自動化が進む中でも、対人サービスが重要な業界であるため、従業員のスキル向上や、適切な人材配置が今後の課題となる。
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