2024年11月15日
労務・人事ニュース
医療DXが加速する日本!PMHの導入で医療費助成の効率化が2026年に全国展開へ
第111回社会保障審議会医療部会 資料 資料3-2 自治体と医療機関・薬局をつなぐ情報連携基盤(PMH:Public Medical Hub)の構築を通じた医療費助成の効率化について(厚労省)
日本における医療デジタル化の大きな推進力として、医療費助成制度の効率化に向けた情報連携基盤の整備が進んでいます。特に自治体と医療機関・薬局間での情報連携を可能にする「Public Medical Hub(PMH)」の導入は、医療費助成、予防接種、母子保健におけるデジタル化を加速し、業務負担の軽減と利用者利便性の向上を目指すものです。2021年4月から厚生労働省とデジタル庁が主導するこの取り組みは、段階的な導入から全国展開を目指しており、令和6年度までに全国の医療機関や薬局への普及を予定しています。
医療費助成分野では、令和5年度に16自治体と87医療機関・薬局が参加し、予防接種や母子保健についても順次実施が進行中です。特に、自治体が運営する医療費助成制度や母子保健情報の管理、予防接種勧奨に関する業務を効率化するため、PMHを通じてデータを一元化し、マイナンバーカードを医療受給者証や診察券として利用する取り組みが展開されています。このシステムの導入により、対象住民は紙媒体の受給者証を携行せず、診療時にはマイナンバーカード一つで資格確認ができるようになり、紛失や忘れのリスクを軽減します。自治体にとっても、資格情報の誤請求を減らし、事務負担の軽減が期待されるため、コスト削減と業務の円滑化が見込まれます。
また、2023年度からは、全国的に医療費助成分野での先行実施が進行中であり、2024年度には180自治体への拡大が予定されています。これにより、全国183自治体においてシステム対応が行われ、医療機関や薬局でもシステム連携が進む計画です。PMHは、医療費助成の受給資格確認をオンラインで行うことができ、住民にとってより迅速かつ便利な医療サービスが提供されることが期待されています。実際、マイナポータル上では住民が予防接種や健診の履歴を確認でき、予約や勧奨通知の提供も行われることで、受診や接種の抜け漏れを防ぐことができます。2024年度からは、予防接種B類や里帰り出産への対応など、さらなる機能拡充も予定されています。
医療機関側でも、受給者証情報の手動入力が削減され、医療費助成の資格確認に伴う業務負担が軽減されます。これにより、正確な資格情報に基づいて請求を行えるようになり、資格過誤請求が減少することで、医療費請求に関する事務作業が大幅に効率化されると予想されています。さらに、医療データの一元化とリアルタイム共有が進むことで、救急時の迅速な診療対応が可能となり、患者の安全性向上にもつながります。2026年度以降、全国でのPMH導入を目指し、オンライン資格確認のシステムが整備されていく予定です。
PMHの利便性は、住民と医療機関双方にとって多くのメリットをもたらします。たとえば、こども医療費助成やひとり親医療助成といった地方自治体が独自に運営する助成制度にも適用されることで、医療機関での助成資格確認が簡略化され、住民の利便性が向上します。自治体側も、受給者証の定期的な印刷や発行にかかるコストを削減でき、住民に対してもより迅速かつ確実なサービス提供が可能になります。
さらに、電子カルテや電子処方箋の利用も拡大されており、PMHとの連携により、医療機関間での情報共有が進むことで、併用禁忌や重複投薬の防止に役立ちます。2024年度には電子カルテの標準化も進められ、診療情報の効率的な管理が実現される見込みです。また、救急医療分野では、救急隊が患者のマイナンバーカードを通じて健康・医療データを即座に確認できるようになることで、救急時の対応スピードが向上し、患者の安全を守るための迅速な措置が可能となります。
特に高齢者や子ども、障がい者向けの医療費助成制度では、オンライン資格確認を通じた受給資格確認が重要です。マイナンバーカードを保有している20歳以上の利用率は12%から19%と比較的高い一方、0歳から19歳の利用率は5%から7%にとどまっており、今後の利用促進が課題となっています。PMH導入が進むことで、医療機関でのマイナンバーカードの利用が促進され、紙の受給者証不要な受診環境が整うことが、マイナンバーカード普及率向上の一因ともなるでしょう。
令和5・6年度には、デジタル庁が先行事業として自治体や医療機関へのシステム改修を支援しており、自治体システムの標準化も進行中です。自治体がPMHシステムに医療費助成に関する資格情報を登録し、医療機関でのオンライン資格確認に対応できるようシステム改修が行われています。医療機関や薬局もPMH対応のレセプトコンピュータ改修を行うことで、オンライン資格確認に基づく自動的な資格確認が可能になり、事務作業の効率化が実現されると期待されています。
今後の展望として、デジタル社会実現に向けた重点政策の一環で、PMHシステムは公費負担医療や地方単独の医療費助成における資格確認の標準化を進めていきます。地方独自の助成制度に対応するシステム基盤の整備が求められ、2026年度以降は全国的な展開を視野に入れています。医療DXの推進により、患者がより高品質な医療サービスを受けられる環境の整備が加速しており、医療機関・薬局、自治体、さらには利用者である住民にとっても持続可能な医療システム構築が期待されています。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ