2024年9月3日
労務・人事ニュース
和歌山 1か月で80時間超の残業が64事業場で発生、労働環境の改善が急務
長時間労働が疑われる事業場に対する令和5年度の監督指導結果を公表します(和歌山労働局)
和歌山労働局労働基準部が発表した最新の監督指導結果によると、長時間労働が疑われる事業場に対する取り締まりが強化されています。この報告は、令和5年度に行われた監督指導の結果をまとめたものであり、特に違法な時間外労働や賃金不払残業、健康障害防止措置の未実施に関する事例が取り上げられています。
令和5年度の監督指導は、225の事業場を対象に実施され、そのうち120事業場(全体の53.3%)で違法な時間外労働が確認されました。さらに、このうち64事業場では、月80時間を超える時間外・休日労働が発生しており、39事業場では月100時間を超える長時間労働が認められました。中でも、12事業場では月150時間を超える過酷な労働が行われており、1事業場では驚異の月200時間を超える労働時間が記録されています。
過重労働による健康障害防止措置が未実施であった事業場も72事業場(全体の32%)に上り、これにより労働者の健康に深刻な影響が及ぶ可能性が指摘されています。さらに、労働時間の適正な把握が不十分であった事業場も41事業場(18.2%)あり、これらの事業場に対しては労働基準監督署から改善指導が行われました。
労働基準法違反の事例として、特に倉庫業や製造業における長時間労働が問題視されています。倉庫業の事例では、業務の繁忙と人手不足が重なり、最長で月127時間もの違法な時間外・休日労働が行われたことが報告されています。この事業場では、労働基準法第32条および第36条第6項に違反しており、労働基準監督署から是正勧告がなされました。
また、製造業の事例では、営業職の労働者が精神障害を発症し、その原因が長時間労働にあるとして労災請求が行われました。この労働者は、最長で月111時間の違法な時間外労働を行っており、さらに固定残業代を超過する時間外労働に対する割増賃金が支払われていなかったことも明らかになっています。
こうした違法な労働環境がもたらす影響は深刻であり、企業にとっても大きなリスクとなります。労働基準監督署からの是正勧告は、企業が法令を遵守し、労働者の健康を守るための措置を講じる必要があることを強調しています。特に、労働時間の適正な管理や、過重労働による健康障害防止措置の実施が求められています。
このような状況を受け、和歌山労働局では、長時間労働の是正に向けた取り組みを今後も積極的に行うとしています。11月には「過重労働解消キャンペーン」が実施され、重点的な監督指導が行われる予定です。このキャンペーンを通じて、さらに多くの事業場で労働環境の改善が進められることが期待されます。
企業が労働環境を改善するためには、労働時間の適正な把握が不可欠です。使用者は、労働者の始業・終業時刻を正確に確認・記録し、労働時間の管理を徹底する必要があります。特に、自己申告制を採用している場合には、労働時間と実際の労働状況との乖離をなくすための実態調査を行い、必要に応じて労働時間を補正することが求められています。
また、企業が自主的に長時間労働を削減するための取り組みも重要です。例えば、建設業者では情報共有システムの導入やドローンを活用した業務効率化などが効果を上げています。これにより、時間外労働時間が大幅に削減され、労働者の健康維持にも寄与しています。
最後に、企業が法令遵守を徹底し、健全な労働環境を維持するためには、労働基準法や労働安全衛生法に基づいた適切な労働時間管理と、過重労働による健康障害防止措置の実施が欠かせません。労働局や監督署からの指導を受けた企業は、速やかに改善措置を講じ、労働者の安全と健康を守る責任を果たすことが求められています。
⇒ 詳しくは和歌山労働局のWEBサイトへ