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2024年6月11日

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国際労働移動と開発 移住労働者の技能形成をめぐる最新動向

国際労働移動における技能と国際協力の可能性 ――移住労働者の技能形成と移住関連活動のODA適格性について――(社人研)

近年、移住労働者が開発途上国の発展に果たす役割の重要性が高まっており、国際社会でもその影響が広く認識されています。世界銀行の「世界開発報告書」2023年版では初めて移民が主題に取り上げられ、移住労働者や難民が国家開発に与える影響が詳細に分析されています。さらに、経済協力開発機構(OECD)では、開発援助委員会(DAC)が移住関連活動におけるODA適格性評価のための原則と基準を設定し、移住労働者の貢献を測定する枠組みを整えつつあります​​。

これらの国際的な動向を背景に、各国の開発機関や研究機関では「移住と開発」の分野における事業や研究活動が活発化しており、移住労働者の役割が再評価されています。特に「技能形成」や「政府開発援助(ODA)」に関連する移住活動の重要性が強調されています​​。

本稿では、ドイツ、オーストラリア、日本の外国人労働者受け入れスキームを比較し、それぞれの国がどのように技能形成を重視しているかを検討します。ドイツの「Triple Win」プロジェクトは、介護人材の受け入れに焦点を当て、オーストラリアの「PALM」プロジェクトは大洋州からの労働者受け入れを進めています。日本では、技能実習制度が長い歴史を持ち、研修と労働を通じた技能形成が強調されています​​。

技能実習制度に関連する調査結果では、実習生が3年間で約208万円を貯蓄できること、受け入れ事業者が実習生の賃金の約1.3倍の費用をかけていること、そして日本社会に約2兆円の付加価値をもたらしていることが確認されています​​。これらの結果からもわかるように、技能形成は移住労働者にとっても受け入れ国にとっても重要な要素であり、国際労働移動を通じた開発への貢献が期待されています。

さらに、Skills Mobility Partnerships(SMPs)という国際的な枠組みが進展しており、これにより途上国開発における移住労働者の役割が一層強調されています。SMPsは、労働者の技能移転を促進し、移住先国での人的資本の形成を目指すものであり、移住労働を通じた産業人材の育成や高収入な労働への移行が期待されています​​。

以上のように、移住労働者の技能形成は、送出国、受入国、そして移住労働者自身にとっても大きな利益をもたらす重要な要素であり、今後も国際的な枠組みや政策の中で重視されるべき課題です。各国の具体的な取り組みや制度の進展を通じて、移住労働がより効果的に開発に貢献することが期待されています。

「国際労働移動における技能と国際協力の可能性 ――移住労働者の技能形成と移住関連活動のODA適格性について――」はこちら

⇒ 詳しくは国立社会保障・人口問題研究所のWEBサイトへ