労務・人事ニュース

  • TOP
  • お知らせ
  • 労務・人事ニュース
  • 地域の連携で支援強化!新しい生活困窮者自立支援

2024年5月23日

労務・人事ニュース

地域の連携で支援強化!新しい生活困窮者自立支援

第29回 社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」(資料)(厚労省)

令和6年5月16日に開催された社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会において、生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律が発表されました。この法律改正により、生活困窮者や生活保護受給者への支援が強化され、彼らの生活環境の改善と自立を支援する取り組みが一層進められることが期待されています。

まず、住宅支援の強化についてです。住宅確保が困難な人々に対して、自治体が一貫して相談支援を提供することが明確化されました。これにより、入居時から退居時までの一貫した支援が行われるようになります。さらに、地域居住支援事業も強化され、地域で安定した生活が送れるように自治体が見守り支援を行うことが努力義務として定められました。

加えて、家賃が低廉な住宅への転居支援も拡充され、生活困窮者住居確保給付金の支給対象者の範囲が広がりました。また、無料低額宿泊所に対する事前届出義務の実効性を確保するために、市町村から都道府県への通知の努力義務が設けられ、届出義務違反への罰則も新設されました。

子どもの貧困対策も強化されました。生活保護世帯の子どもたちに対して、訪問等を通じて学習や生活環境の改善、奨学金の情報提供や助言を行う事業が法定化されました。これにより、生活保護世帯の子どもたちが早期から支援を受けられるようになり、将来的な自立を促進する仕組みが整備されます。また、高校卒業後に就職する際には、新生活の立ち上げ費用として一時金が支給されることになり、安定した生活基盤の確立を支援します。

支援関係機関の連携強化も重要なポイントです。生活困窮者への支援をより効果的に行うために、就労準備支援や家計改善支援が全国的に実施されることになりました。これにより、生活保護受給者もこれらの支援を受けられるようになり、両制度の連携が強化されます。さらに、複雑な課題を持つケースへの対応力を強化するため、関係機関間で情報を共有し、支援体制を検討する会議体が設置されます。

医療扶助や健康管理支援についても、新たな仕組みが導入されました。都道府県が広域的観点からデータ分析を行い、市町村への情報提供を行う仕組みが設けられ、医療扶助の効率的な運用や健康管理支援事業の効果的な実施が促進されます。これにより、生活保護受給者の健康管理が強化され、医療扶助の適正化が図られることが期待されています。

今回の法律改正は、単身高齢者世帯や低所得者の増加に対応するための重要な措置です。住宅支援や生活困窮者支援のニーズが高まる中、持ち家率の低下や空き家の増加などの課題に対処するため、居住支援の強化が特に重要視されています。また、子どもの貧困対策として、生活保護世帯の子どもたちへの支援が強化されることで、彼らが将来自立できるような環境が整備されます。これにより、生活困窮者や生活保護受給者が安定した生活を送り、自立できる環境が整うことが期待されています。

この法律改正は令和7年4月1日から施行されますが、一部の改正については公布日や令和6年10月1日から施行されるものもあります。

具体的な支援事例として、神奈川県座間市や福岡県大牟田市の取り組みが紹介されました。これらの自治体では、生活困窮者の相談窓口を設け、居住支援協議会を活用して地域全体での支援体制を整えています。また、愛知県名古屋市や東京都町田市では、賃貸住宅を提供しやすい環境を整備し、見守り支援を行う住宅の仕組みを構築しています。福岡県北九州市では、NPO法人が空室が増えた物件を一括して借り上げ、生活支援付きの住宅を運営する仕組みを導入しており、住まいの確保に困っている人々が安心して生活できる環境が整備されています。

今回の法律改正により、生活困窮者や生活保護受給者への支援が大幅に強化されることで、彼らの自立と安定した生活が促進されることが期待されています。自治体や関係機関は、地域の実情に応じた支援体制を構築し、生活困窮者の自立を支援するためにさらなる努力が求められます。

「(資料2)生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律の概要について」はこちら

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ