2024年7月16日
労務・人事ニュース
地方若者のキャリア変化を分析、東京都と比較した最新調査結果で明らかに
地方の若者のキャリアの変化と職業意識 ―北海道・長野調査および東京都調査との比較から―(JILPT)
2024年7月4日、労働政策研究報告書No.231が発表されました。この報告書では、地方の若者のキャリアの変化と職業意識について、東京都の若者との比較を通じて明らかにすることを目的としています。
今回の研究は、北海道と長野の若者を対象に調査を行い、その結果を東京都の若者の調査結果と比較することで、地方と都市の違いを浮き彫りにしています。調査対象者は住民基本台帳から無作為に抽出された25歳から34歳の若者で、調査は郵送とWEBを併用して実施されました。札幌市では1920人に依頼し、683人から回答を得ました。釧路市では800人に依頼し、294人から回答を得ています。長野市では1440人に依頼し、578人から回答があり、諏訪地域(諏訪・茅野・岡谷)では1440人に依頼し、487人から回答がありました。
この調査の結果、地方と都市での若者のキャリアと職業意識に関するいくつかの重要な発見がありました。まず、東京都では高学歴化が進むにつれてキャリア格差が顕著になっており、仕事への意欲が低下し「堅実性」も弱まっていることがわかりました。これに対して、地方では学歴によるキャリア格差は東京都ほど大きくなく、高卒者の正社員比率はむしろ東京都よりも高い結果が出ています。特に女性においては、医療、保健、福祉、教育関連分野を専攻した高等教育卒業者が増加し、地域に定着していることが影響していると考えられます。
また、職業意識についても地域差が見られました。地方の若者は東京都の若者よりも「仕事離れ」志向が強く、「堅実性」も弱い傾向があります。「自分に向いている仕事がわからない」という若者は地方に多く、フリーランス志向も都市部で高くなっています。これは、都市部の若者が特定の企業や組織に縛られずに自由な働き方を望む傾向が強いことを示しています。
さらに、公的支援の利用状況についても調査が行われました。地方ではハローワークの利用割合が高く、フリーターから正社員に移行する際にも公的支援の利用が多いことがわかりました。これに対して東京都では公的支援の利用割合が低く、若者の自立支援が求められている状況です。
この調査結果を基に、政策的なインプリケーションとして、地方と都市の若者支援のあり方について再考する必要があることが示されています。特に地方においては、ハローワークや公的支援が引き続き重要な役割を果たしており、若者支援の継続が求められています。また、都市と地方の産業構造の違いが若者の働き方に与える影響についても注視する必要があります。
労働政策研究報告書No.231は、若年者雇用政策の基礎資料としての役割を果たすことを期待されており、今後の政策立案において重要な参考資料となるでしょう。