2024年8月30日
労務・人事ニュース
外国人技能実習生の73.3%で法令違反発覚—厚労省が令和5年の監督指導結果を公表
労働基準監督署等が外国人技能実習生の実習実施者に対して行った令和5年の監督指導、送検等の状況を公表します(厚労省)
厚生労働省は令和5年、全国の労働基準監督署を通じて外国人技能実習生を雇用する実習実施者に対する監督指導を実施し、その結果と送検の状況を取りまとめました。この報告は、外国人技能実習生が働く現場における労働基準関係法令の遵守状況を明らかにし、制度の適正運用と実習生の保護を目指すものです。
報告によれば、令和5年に監督指導が行われた実習実施者の事業場は全国で10,378件にのぼり、そのうち7,602件、すなわち全体の73.3%において労働基準関係法令違反が確認されました。これらの違反事例は、実習生の安全や健康、適正な労働条件を損なうものであり、制度の目的である技能の習得と国際貢献に対する重大な障害となっています。
特に目立った違反として挙げられるのが、安全基準に関するものです。具体的には、使用する機械や設備が安全基準を満たしていないケースが2,447件(全体の23.6%)確認されました。このような違反は、実習生の生命や健康を直接危険にさらすものであり、極めて重大です。加えて、割増賃金の支払いが適正に行われていない事例も1,709件(16.5%)報告されており、これは労働者としての基本的な権利が侵害されていることを示しています。また、健康診断結果に基づく医師の意見聴取が行われていないケースも1,685件(16.2%)に上り、健康管理の不備が問題視されています。
これらの違反が指摘された背景には、実習実施者が法令の重要性を理解していないことや、適切な対応を取るための体制が不十分であることが挙げられます。また、外国人技能実習生という特異な立場を考慮すると、言語や文化の違いが原因で適切なコミュニケーションが図られず、結果として違反が発生するケースも少なくありません。このような状況に対し、労働基準監督署は監理団体や実習実施者に対して労働基準関係法令の周知徹底を図り、再発防止に努めています。
一方で、重大かつ悪質な法令違反に対しては厳格な対応が取られています。令和5年には、27件の事案が送検されました。これらの事例は、単なる違反を超えて実習生の人権や安全を著しく侵害するものであり、法令に基づく厳正な処罰が求められます。具体的な事例としては、時間外労働や休日労働に関する違法な長時間労働が繰り返されていたケースや、安全対策が不十分なまま危険な作業を行わせていた事例が含まれています。これらの事案では、労働基準法や労働安全衛生法違反としての送検が行われ、再発防止に向けた厳しい措置が講じられています。
さらに、外国人技能実習機構と労働基準監督署との連携強化も進められています。令和5年には、労働基準監督署から外国人技能実習機構への通報が519件、逆に外国人技能実習機構から労働基準監督署への通報が2,173件ありました。これらの通報は、実習生に対する労働基準関係法令違反の疑いがある場合に相互に情報を共有し、適切な対応を図るためのものです。また、強制労働などの人権侵害が疑われる事案については、合同で監督・調査が行われるケースもあり、実習生の保護に向けた体制が強化されています。
このように、外国人技能実習制度の適正運用と実習生の保護を実現するためには、監督指導の徹底と違反への厳正な対応が欠かせません。厚生労働省は、引き続き全国の労働基準監督署と連携し、実習生が安全かつ適正な環境で技能を習得できるよう努める方針を示しています。また、実習実施者に対しては、法令の遵守と実習生への適切な対応を求め、制度全体の信頼性を確保していく考えです。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ