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2025年3月1日

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大企業の60%以上が賃上げ実施、新卒初任給の増額も50%に拡大!企業の待遇改善の変化とは?

人への投資と企業戦略に関するパネル調査(JILPT 企業パネル調査)(第2回)(JILPT)

2025年2月14日、労働政策研究・研修機構(JILPT)は、「人への投資と企業戦略に関するパネル調査」の第2回調査結果を公表した。本調査は、企業の人材戦略が経営や労働市場に及ぼす影響を継続的に把握することを目的として、2022年から毎年実施されている。今回の調査では、前年の結果と比較しながら、企業の人材投資やマネジメントの変化を分析した。

調査結果によると、企業における人材育成の取り組みは拡充される傾向にあることが確認された。特に研修受講者の割合については、大企業において引き続き高い水準を維持しつつも、中小企業においても向上していることがわかった。前回の調査と比較すると、研修を実施していない企業の割合が低下し、受講者の割合が増加している。企業ごとに状況は異なるものの、全体として人材育成の取り組みが強化されていることがうかがえる。

研修の受講時間についても、大企業の方が引き続き充実しているが、中小企業においても短時間の研修を導入する企業が増えている。前回調査では研修を実施していなかった企業の一部が研修を開始し、短時間の受講を経て徐々に受講時間を増やしている傾向がみられた。こうした変化は、企業が人材育成の必要性を認識し、従業員への教育機会を拡充しようとしていることを示唆している。

企業の人材マネジメントに関しては、正社員を中心とした人材不足が依然として課題となっていることが明らかになった。中小企業では特に正社員の不足感が強く、大企業では正社員に加えて非正規社員においても人手不足が深刻化している。職種別に見ると、デジタル技術を活用できる人材や技能職、販売職において不足が顕著であり、多くの企業が適切な人材の確保に苦慮している。

この一年間で、人材マネジメントの取り組みのうち、雇用管理の分野では進展がみられた。特に、従業員間の不合理な格差を是正する取り組みについては、中小企業・大企業ともに一定の進捗があった。一方で、人材育成に関する施策については、大企業において非正規社員を中心に取り組みが進展しているものの、中小企業では小幅な変化にとどまった。柔軟な働き方や育児支援制度については、もともと大企業の方が実施割合が高いが、中小企業でも導入が進んでいる。しかし、健康経営やインセンティブ制度については、大企業の方が積極的に取り組んでいることが明らかになった。

従業員の満足度やワークエンゲージメントに関する調査では、大企業の方が引き続き積極的に取り組んでいることが確認された。前回調査と比較すると、大企業と中小企業の取り組みの差が拡大していることが分かる。従業員の健康に関するデータの把握状況についても、両者の違いが顕著になっており、特に大企業では健康管理の取り組みが進んでいることが確認された。

デジタル技術の活用については、大企業が引き続き先行しており、中小企業との差が広がっていることが明らかになった。AIを活用した業務の効率化についても、大企業の方が導入割合が高く、将来的な活用に対する意識の面でも中小企業との差が拡大していることが示された。

在宅勤務の活用については、中小企業では着実に制度が浸透しているものの、大企業では制度を縮小する動きがみられた。コロナ禍で導入された在宅勤務制度が、一部の大企業では廃止される可能性があることが示唆されている。制度を導入している企業の間では、最適と考えられる活用頻度が全体的に低下しており、特に大企業においてその傾向が顕著だった。中小企業では0日とする割合が増加する一方で、週2~4日程度の勤務を維持している企業も多く、企業によって対応が分かれていることが分かった。

新型コロナウイルス感染症の影響については、調査時点で5類移行後の2023年8月の状況を反映しているものの、なお4割程度の企業が何らかの影響を受けていることが明らかになった。特に中小企業では影響が長引いており、回復の速度に差が出ていることが示唆されている。

賃上げの状況については、中小企業・大企業ともに、9割以上の企業が何らかの賃上げを実施していた。中でも、ベースアップの実施割合が増加し、中小企業では5割程度、大企業では6割程度の企業が対応した。特に大企業では、新卒者の初任給の増額を実施した割合が5割に達し、前年より25ポイント上昇している。非正規雇用やパート労働者の昇給も、大企業の方が中小企業より進んでおり、待遇改善の取り組みが進展していることがうかがえた。

今回の調査を通じて、人材育成の取り組みが拡充傾向にあることや、賃上げを実施する企業が増加していることが確認された。一方で、人手不足の状況やデジタル技術の活用における大企業と中小企業の格差が拡大している点が課題として浮き彫りになった。今後の企業の取り組みがどのように進展するかについて、さらなる調査と分析が求められる。

⇒ 詳しくは独立行政法人労働政策研究・研修機構のWEBサイトへ