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2025年3月2日

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大気汚染防止法改正!非鉄金属製造業に新たな排出基準、施行は2025年10月1日

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「大気汚染防止法施行規則等の一部を改正する省令」の公布について(環境省)

2025年2月17日、環境省は「大気汚染防止法施行規則等の一部を改正する省令」を公布した。これは、水銀による大気汚染防止のための規制強化を目的とし、近年の社会情勢や法施行状況を踏まえた制度の見直しによるものだ。特に、一般廃棄物焼却施設や非鉄金属製造施設の監視強化、排出基準の見直し、新たな規制基準の導入などが盛り込まれている。

今回の改正の背景には、水銀を含む大気汚染問題の国際的な対策がある。日本は平成25年10月に熊本市と水俣市で開催された外交会議において、水銀汚染の防止を目的とした「水銀に関する水俣条約」を採択し、平成28年2月2日に正式に締結した。この条約の採択に伴い、水銀の大気中への排出を規制するために大気汚染防止法の一部が改正され、平成27年6月19日に交付された。その後、平成30年4月1日に施行され、以降は毎年、水銀排出施設の届出状況、測定結果、要排出抑制施設の取り組みのフォローアップが行われてきた。しかし、法施行から5年が経過し、より効果的な対策が求められるようになったため、制度の見直しが行われることとなった。

この見直しの検討は、中央環境審議会大気・騒音振動部会の大気排出基準等専門委員会において慎重に行われ、令和6年9月25日に「水銀に関する水俣条約を踏まえた水銀大気排出対策の実施について(第三次答申)」が環境大臣へ提出された。この答申を受けて、環境省は「大気汚染防止法施行規則等の一部を改正する省令」の公布に踏み切った。

今回の改正では、まず一般廃棄物焼却施設および非鉄金属製造施設について、より厳格な監視体制を確立するために「連続測定法」の導入を可能とし、これに関連する記録・保存義務を明確に規定した。従来の測定方法では定期的なサンプリングに依存していたため、リアルタイムでの排出状況の把握が難しかった。しかし、連続測定法の導入により、常に水銀排出レベルを監視できるようになり、異常が発生した際の早期対応が可能となる。

また、銅、鉛、亜鉛の二次精錬施設における排出基準についても見直しが行われた。これらの施設は、非鉄金属をリサイクルする過程で水銀を含む排出ガスを発生させる可能性があるため、規制強化が求められていた。改正により、これまで以上に厳格な基準が適用されることで、水銀の大気排出量をさらに削減できる見込みだ。

さらに、今回の改正で新たに規制対象となったのが、石炭ガス化複合発電施設(IGCC)だ。IGCCは、石炭をガス化して発電を行う技術で、従来の石炭火力発電に比べて高いエネルギー効率を実現することができる。しかし、石炭の燃焼過程で水銀を含む排出物が発生する可能性があるため、適切な対策が必要とされてきた。今回の改正では、この施設に対して新たな排出基準が設定され、より厳格な管理が求められることとなった。

この省令改正は、令和7年10月1日から施行される予定であり、各事業者は新たな規制に対応するための準備を進める必要がある。水銀の大気排出削減は、日本国内のみならず国際的にも重要な環境課題であり、今回の規制強化はその一環として大きな意味を持つ。企業は今後、環境基準の厳格化に適応するため、設備の改良や測定技術の向上を進めることが求められる。

この改正により、企業は水銀排出に関する監視体制の強化や新たな基準の適用を求められることとなるが、同時に環境負荷の低減を図ることで、持続可能な事業運営を実現することが可能になる。特に、非鉄金属精錬業や廃棄物処理業、発電業界にとっては、今後の事業展開において環境対応力が一層の競争優位性を生む要素となるだろう。環境規制の強化は、短期的には事業運営に影響を及ぼす可能性があるが、長期的には環境配慮型の経営戦略の一環として企業価値を高める重要なポイントとなる。

水銀を含む大気汚染は、健康や生態系への影響が大きく、国際的にも削減努力が求められている。今回の改正は、水銀の排出をより適切に管理することで、国内外の環境保全に貢献するものであり、日本が今後も環境先進国としての役割を果たすための重要な施策のひとつとなるだろう。企業にとっては、新たな基準への適応が求められる一方で、環境対応を進めることでブランド価値の向上や国際的な評価の向上にもつながる可能性がある。環境規制の強化を単なる負担と捉えるのではなく、持続可能な成長のための投資と位置づけ、積極的に対応することが求められる。

⇒ 詳しくは環境省のWEBサイトへ

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