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2024年9月3日

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奈良労働局が令和5年度の監督指導結果を公表 違法な時間外労働が47.7%の事業場で確認

長時間労働が疑われる事業場に対する令和5年度の監督指導結果を公表します(奈良労働局)

長時間労働に関する監督指導結果に関する報告が、奈良労働局より発表されました。この報告は、令和5年度において長時間労働が疑われる事業場を対象に、労働基準監督署が実施した監督指導の結果をまとめたものです。報告によると、調査対象となった321事業場のうち、153事業場(47.7%)で違法な時間外労働が確認され、是正・改善に向けた指導が行われました。

特に注目されるのは、違法な時間外労働が行われた事業場の中で、1か月当たりの時間外・休日労働が80時間を超えるケースが多く存在した点です。具体的には、153事業場のうち57事業場(37.3%)で、1か月あたり80時間を超える時間外・休日労働が確認され、さらにそのうち20.3%が100時間を超えていました。極めて深刻な例として、1か月当たり200時間を超える労働が行われていた事業場も存在しました。このような状況に対し、奈良労働局は厳しい是正勧告を行い、改善に向けた具体的な指導を行っています。

また、賃金不払残業の問題も深刻です。調査によれば、21事業場(6.5%)で賃金不払残業が発生しており、適正な賃金支払いが行われていない実態が浮き彫りになっています。これに対しても、奈良労働局は是正を求めるとともに、今後の再発防止に向けた取り組みを強化しています。

さらに、過重労働による健康障害防止措置が未実施であった事業場も多数存在しており、80事業場(24.9%)が該当しました。このような状況は、労働者の健康に深刻な影響を及ぼす可能性が高いため、適切な健康管理措置が求められています。奈良労働局は、これらの事業場に対して健康障害防止のための具体的な措置を講じるよう指導を行いました。

報告には、具体的な事例も含まれています。例えば、倉庫業の事業場において、36協定で定めた上限時間を超える違法な時間外・休日労働が確認され、最長で1か月127時間もの労働が行われていたケースが紹介されています。この事例では、労働基準法第32条や第36条第6項に違反しており、奈良労働局は是正を強く求めるとともに、取引先の協力を得て労働時間削減の取り組みを進めるよう指導を行いました。

また、製造業の事業場では、営業職の労働者が長時間労働による精神障害を発症し、労災請求が行われたケースも報告されています。この事例では、最長で1か月111時間の違法な時間外労働が確認され、固定残業代を超える部分の賃金が支払われていないという問題も明らかになりました。このような違法な状況に対しても、奈良労働局は是正を指導し、労働者の健康管理を徹底するよう求めています。

さらに、建設業や運送業など、特定の業種においても違法な長時間労働が横行している事例が報告されています。これらの業種では、業務の特性上、長時間労働が常態化しやすい傾向があり、労働基準監督署の監督指導が特に重要となっています。例えば、建設業では、業務の効率化や情報共有システムの導入など、時間外労働の削減に向けた取り組みが行われていますが、依然として厳しい状況が続いています。

奈良労働局では、今後も長時間労働の是正に向けた取り組みを強化するとともに、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を行う予定です。また、各事業場に対しては、労働時間の適正管理を徹底し、労働者の健康管理を最優先に考えた労務管理体制の構築を求めています。

このように、奈良労働局が公表した報告は、企業の労務管理における重大な問題点を浮き彫りにするとともに、適切な改善措置を講じることの重要性を強調しています。労働基準法に基づく適正な労働時間管理の徹底と、労働者の健康管理に対する意識向上が求められており、企業はこれらの課題に真摯に取り組む必要があります。

⇒ 詳しくは奈良労働局のWEBサイトへ

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