2024年9月3日
労務・人事ニュース
奈良労働局のあっせん制度、53.1%が合意に至る実績を公表
令和5年度 個別労働紛争解決制度施行状況【奈良労働局版】(奈良労働局)
令和5年度の奈良労働局による個別労働紛争解決制度の施行状況について詳述します。この制度は、労働者と事業主の間で生じる労働条件や職場環境に関するトラブルを未然に防ぎ、迅速かつ円滑に解決を図るための重要な取り組みです。主に「総合労働相談」、「助言・指導」、「あっせん」の3つの方法で運用されています。
奈良労働局が公表したデータによれば、令和5年度の総合労働相談件数は9,215件となり、前年度比で11.7%減少しました。これは1万件を下回るものの、依然として高い水準を維持しています。法制度に関する問い合わせや、労働基準法違反の疑いがあるケースなども含まれており、労働問題に関する関心の高さが窺えます。特に、民事上の個別労働紛争に関する相談件数は2,141件と、前年と比べてほぼ横ばいであり、この領域におけるトラブルの継続的な発生が見て取れます。
具体的には、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談が引き続き最多であり、その件数は494件と10年連続で最多となっていますが、前年度比では25.8%減少しました。この減少は、労働施策総合推進法の改正によるパワーハラスメントに関する取り扱いの変化が影響していると考えられます。助言・指導の申出件数も同様に、いじめ・嫌がらせが最も多く、14件となっていますが、こちらは前年から30.0%の減少が見られました。一方で、あっせんの申請に関しては26件と、4.0%の増加が報告されています。
「労働条件の引き下げ」に関する問題も注目すべき点です。この相談件数は249件で、前年度比で25.1%増加しました。助言・指導の申出件数も8件と、前年から100.0%の大幅な増加が見られます。あっせんの申請においても、14件で同75.0%の増加を記録しており、労働条件の変更に伴う紛争が増加していることが示唆されています。
総合労働相談コーナーに寄せられた相談の内訳を見ると、法制度に関する問い合わせが6,612件で全体の66.0%を占め、次いで労働基準法違反の疑いがあるものが1,163件、全体の11.6%を占めています。また、民事上の個別労働相談は2,141件で、21.4%を占めています。これらのデータから、労働者が抱える問題の多様性と、法的な支援が求められている状況が明らかになります。
さらに、助言・指導およびあっせんの処理件数についても詳細が報告されています。助言・指導の処理件数は147件で、そのうち98.0%が助言の実施により解決されています。あっせんの処理件数は81件で、全体の53.1%が当事者間の合意により解決されており、特にあっせんを開催せずに合意に至ったケースも3.7%存在します。
労働者の就労形態別の相談件数や申出件数を見ると、正社員に関するものが多く、次いで短時間労働者や有期雇用労働者に関するものが続いています。これらのデータは、就労形態が多様化する中で、それぞれの労働形態に応じたトラブルが発生していることを示しています。
奈良労働局は、これらの施行状況を受けて、引き続き労働者と事業主の間で生じる個別労働紛争の未然防止と迅速な解決に向けた取り組みを強化しています。具体的には、総合労働相談コーナーでの相談対応の強化、助言・指導の的確な実施、あっせん手続きの円滑な運用などが挙げられます。
令和5年度のデータからは、労働環境の変化や社会情勢に伴い、労働者と事業主の間での紛争が多発していることが確認されます。特に、「いじめ・嫌がらせ」や「労働条件の引き下げ」に関する問題は、依然として解決すべき重要な課題であり、これらに対する効果的な対応が求められています。また、総合労働相談や助言・指導、あっせんといった制度が果たす役割の重要性も改めて認識されており、これらの制度のさらなる活用が期待されます。
⇒ 詳しくは奈良労働局のWEBサイトへ