2024年11月22日
労務・人事ニュース
女性活躍推進法の10年延長を検討、企業に求められる新たな行動計画とは
第75回労働政策審議会雇用環境・均等分科会 参考資料1-1 雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会報告書 概要(厚労省)
女性の職場での活躍推進とハラスメント対策の強化が、令和の時代に求められる重要な課題として注目されています。令和元年に改正された女性活躍推進法は、雇用の現場での女性の参画をさらに促進するための基盤を整備しましたが、依然として解決すべき課題が山積しています。本報告書では、女性活躍推進法の適用期限が令和7年度末に設定されている中で、さらなる延長や強化の必要性が提案され、以下のような具体的な施策が議論されました。
第一に、企業規模に応じた柔軟な対応が求められています。現在、従業員数100人以下の企業における事業主行動計画の策定は努力義務となっていますが、小規模事業者が女性活躍推進に取り組むためには、具体的な支援策の強化が必要です。これに加えて、「えるぼし認定」制度の見直しが提案されています。これは、現在の認定基準では評価しきれない積極的な取り組みを行う企業を新たに評価対象とすることで、企業間競争を促し、女性活躍の環境を向上させる狙いがあります。
また、企業における男女間の賃金格差についての情報公開が、従業員101人から300人規模の企業にも義務付けられる見通しです。これは、賃金格差を是正するための重要な一歩であり、特に女性管理職比率の向上を目指す企業にとっては、開示情報を通じて透明性を高める機会となります。この情報開示には、男女別の管理職登用比率も付記することが奨励されており、より詳細なデータを通じて現状の課題を可視化する意義があります。
一方で、職場におけるハラスメント対策の強化も急務です。パワーハラスメントに加えて、カスタマーハラスメントや就活時のセクシュアルハラスメントが社会問題化しており、労働者を保護するための企業の義務が拡大される方向です。特にカスタマーハラスメントでは、「社会通念上相当な範囲を超えた言動」を明確に定義し、業界団体や行政との連携を通じて対策を強化する必要性が指摘されています。このようなハラスメント対策は、ILO第190号条約の批准に向けた重要な一歩ともなります。
さらに、女性特有の健康課題への対応が議論されています。月経、不妊治療、更年期などの健康問題が、女性の仕事や生活の質に大きな影響を与えることを踏まえ、企業がこれらの課題に積極的に取り組むことが求められています。例えば、健康支援を含む事業主行動計画を策定する際には、産業保健スタッフの活用が奨励されています。また、これらの取り組みを評価するために、「えるぼし認定制度」を見直し、健康支援を進める企業を積極的に評価する仕組みの導入も検討されています。
全体として、女性を含むすべての労働者が安心して働ける環境を整えることが求められており、そのためには国や企業が一体となった取り組みが不可欠です。特に、中小企業が女性活躍や健康支援に取り組む際には、具体的な支援が鍵となります。これらの施策を通じて、企業は働き手の多様性を尊重しつつ、生産性向上や職場環境の改善を目指すことが期待されています。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ