2025年3月11日
労務・人事ニュース
学術研究等の平均月給は515,657円!前年比2.1%増で安定した給与水準を維持(毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報)
毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報 第1表 月間現金給与額(厚労省)学術研究等
令和6年の毎月勤労統計調査によると、学術研究等の平均月間現金給与額は515,657円であり、前年比2.1%の増加が確認されている。この増加率は全産業平均の2.8%をやや下回るものの、学術研究分野の安定した給与水準を維持していることが分かる。特に、基本給の増加が給与全体の伸びを支えている。
給与の内訳を詳しく見ると、基本給に該当する「きまって支給される給与」は403,780円で、前年比2.9%の増加が見られる。この増加率は、学術研究機関や民間の研究所が専門人材を確保するために賃金を引き上げていることを示唆している。特に、医療・バイオテクノロジー、AI・データサイエンス、エネルギー開発などの先端分野では、研究開発競争が激化しており、優秀な人材を確保するための給与改善が進められていると考えられる。
また、時間外手当を含む所定外給与は377,803円で、前年比3.5%の増加となった。このデータから、学術研究の分野では、業務の専門性が高く、プロジェクト進行の関係で時間外勤務が発生しやすいことが分かる。特に、実験・データ解析を伴う業務では、長時間労働が発生しやすく、それに伴い時間外手当の支給額も増加していると考えられる。
一方、特別に支払われた給与、いわゆるボーナスに該当する部分は111,877円で、前年比1.2%の減少が記録されている。この減少率は比較的軽微であるが、学術研究分野の予算削減や研究助成の変動が影響している可能性がある。特に、国立研究機関や大学の研究所では、助成金やプロジェクト資金の配分が年度ごとに異なるため、ボーナスの増減が起こりやすい。
他業界と比較すると、学術研究等の給与水準は高い水準にあり、特に基本給が安定している点が特徴的である。例えば、鉱業・採石業(411,892円)、製造業(412,916円)、不動産・物品賃貸業(420,219円)と比較すると、学術研究等の515,657円は20%以上高く、特に知識・技術の専門性が求められる職種であることが給与水準の高さに反映されている。一方で、金融業・保険業(524,040円)や電気・ガス業(599,269円)と比べると、学術研究等の給与水準はそれらに次ぐ位置にある。
採用担当者にとって重要なのは、この給与水準が人材確保にどのような影響を与えるかである。学術研究等の分野では、高度な専門知識を持つ人材が求められ、特に博士号取得者やポストドクター(博士研究員)の雇用が重要な要素となる。民間企業の研究開発職でも、AIや量子コンピューティング、生物工学などの先端分野で優秀な研究者を確保するため、給与水準の維持・向上が求められる。
また、今後の課題として、労働時間の適正化とワークライフバランスの向上が挙げられる。学術研究等の分野では、プロジェクトの進行や論文執筆などにより、長時間労働が発生しやすい傾向がある。しかし、近年では研究環境の改善が進み、フレックスタイム制度の導入やリモートワークの活用が進められている。採用活動においては、給与の高さだけでなく、研究環境の整備や柔軟な働き方の導入をアピールすることが、求職者にとって魅力的な要素となる。
今後の展望として、学術研究等の分野は技術革新とともにさらなる成長が見込まれる。特に、データサイエンス、バイオテクノロジー、新素材開発などの分野では、研究資金の増加に伴い、研究者の給与水準が向上する可能性がある。企業や大学は、給与水準の維持だけでなく、研究者のスキルアップを支援する制度を充実させることで、競争力を高めることができる。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ