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2025年4月15日

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宅配便取扱個数50億個時代へ、100戸ごとに1台の荷さばき駐車義務が共同住宅に拡大

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「標準駐車場条例」を改正 ~社会の変化に対応した駐車施設の附置義務制度の見直しを推進~(国交省)

国土交通省は、令和7年3月28日に標準駐車場条例の改正を公表し、都市における新たな物流や交通環境の変化に対応した制度改革を進める方針を明確にしました。今回の改正は、電子商取引の普及、共同住宅の高層化、さらには物流2024年問題に伴う人手不足や配送効率の悪化といった社会課題を背景に策定されたものであり、地方公共団体が駐車場法に基づき条例を整備する際の参考となる「標準駐車場条例」の見直しが行われました。この改正は、単なる駐車スペースの数の確保という次元を超え、都市政策全体における交通、物流、ユニバーサルデザイン、そして居住環境の在り方に対する抜本的な再設計を促すものとなっています。

まず、今回の改正の中核となるのが「共同住宅に対する荷さばき駐車施設の附置義務の追加」です。これまでは百貨店などの商業施設を主な対象としていた荷さばきスペースの設置義務が、今後は一定規模以上の共同住宅にも及ぶことになります。背景には、令和5年の宅配便取扱個数が約50億個に達するなど、平成6年時点の約13億個から実に4倍近くまで増加している現状があり、とくに高層住宅やセキュリティ強化型の集合住宅では、配送業者が長時間にわたり路上駐車せざるを得ないケースが増えています。これにより、都市部では歩行者や車両の通行を妨げる状況が日常化しており、安全性や生活利便性の観点からも荷さばきスペースの整備が急務となっていたのです。

新しい基準では、標準的な目安として50戸以上の共同住宅に対し、100戸ごとに1台分の荷さばきスペースの設置が必要とされます。さらに、400戸以上や800戸以上といった大規模物件については、必要台数が逓減する設計が導入されており、合理的かつ柔軟な基準設定がなされています。また、改正された駐車場法施行令の施行日である令和8年4月1日以降は、地方公共団体が条例でこの附置義務を適用できる地域が拡大されることから、各自治体における具体的な制度整備が加速することが期待されます。

次に、公共交通利用の促進と駐車場整備施策とのバランスをとる目的で、「公共交通利用促進措置による附置義務の緩和」が新たに加えられました。これは、鉄道やバスといった公共交通機関との連携施策を導入している地域や物件においては、駐車場の附置義務を一部緩和することが可能となるものであり、過剰な車依存を抑制しつつ、都市の持続可能な発展を支える一手とされています。

さらに、車両の大型化や車種の多様化、バリアフリーへの配慮など、現代のニーズに応じた質的な対応も今回の改正の柱となっています。たとえば、車椅子使用者向けの駐車スペースについては、その設置台数が戸数に応じて見直され、これまでの「1台以上」から「200戸までは2%」といったより明確な基準が設定されました。また、対応車高についても2.3メートルを確保するよう変更されており、より幅広い車種や利用者に対応できる仕様となっています。同様に、荷さばきスペースの車高についても、従来より引き上げられた3.2メートルという新基準が導入され、大型配送車両の利用にも対応できるよう配慮されています。

これらの質的・量的な対応に加え、「駐車場の集約化」に向けた隔地規定の追加も大きなポイントです。これまでは建物敷地内に駐車スペースを設けることが原則でしたが、今後は地域内における集約型の駐車場を活用することで、建物の1階部分を歩行者に開放するような都市空間の活用が促進されることになります。これにより、まちなかにおける歩行者の安全性や快適性の向上が期待されるだけでなく、都市の景観や賑わいの形成にも寄与する施策として注目されます。

そのほかにも、駐車施設の振替規定や専用駐車場に関する附置義務の緩和、施設の廃止時における届出の義務化といった多岐にわたる見直しが行われており、今後の条例運用においても、より柔軟かつ実効的な管理体制の構築が求められることになります。

今回の改正は、企業の採用や人材配置においても少なからぬ影響を与えると考えられます。たとえば、物流施設や共同住宅の開発に携わる建設・不動産業界では、新基準に即した設計・施工対応が不可欠となり、都市政策・法制度に通じた人材の確保が重要性を増しています。また、配送業務を担う運輸業界にとっても、配送効率の改善や安全性の向上といった観点から、駐車場政策の変化を理解する人材が求められるでしょう。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

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