2024年11月20日
労務・人事ニュース
安定したサプライチェーンを目指す、国土交通省が多様な輸送ルートで実証調査開始
令和6年度「国際物流の多元化・強靱化に向けた実証調査」の公募を開始します(国交省)
国土交通省物流・自動車局の物流政策課国際物流室は、令和6年度に「国際物流の多元化・強靱化に向けた実証調査」の公募を開始しました。この調査は、グローバルサプライチェーンの安定性を強化するため、新しい輸送手段やルートの有効性を確認することを目的としています。昨今、コロナウイルスのパンデミックや地政学的なリスク、自然災害などの影響で、サプライチェーンが頻繁に混乱する状況が発生しています。そのため、従来の物流ルートに代わる、あるいはそれを補完する新たな輸送オプションの導入が求められているのです。
この公募の期間は令和6年11月6日から12月6日までと定められており、日系荷主企業および物流事業者が対象です。この調査では、輸送の実施条件が明確に定められています。輸送期間は令和6年11月中旬から令和7年1月までとし、輸送ルートは次のようなものが考えられています。まず、日本と中央アジアを結ぶルートとして、パキスタンのカラチ港からアフガニスタンを経由するルートが挙げられます。また、北米ミニランドブリッジを利用した日本と欧州を結ぶルートや、南シナ海を迂回し日本とASEAN諸国を結ぶルートも含まれています。さらに、中央アジアのカスピ海を通る新規性のある提案も対象とされています。このような新しい輸送ルートの提案により、今後の物流ネットワークの柔軟性が高まることが期待されています。
参加事業者の選定にあたっては、輸送の必要性や実現可能性、そしてその輸送ルートが他の事業者にも利用可能かといった汎用性が考慮されます。選定された事業者は、輸送コスト、リードタイム、品質、輸送手続きの効率性、トレーサビリティ、BCP(事業継続計画)としてのリスク評価などの項目について検証が行われます。これにより、グローバル物流におけるリスクを軽減し、各企業が安定した物流環境を確保するための知見が得られると考えられます。
さらに、この実証輸送に参加する事業者には、国費として一輸送につき原則110万円の調査協力費が支給される予定です。ただし、応募件数が多い場合には、この支給額が調整される可能性もあります。実証輸送の詳細については、別途提供される事業概要および公募要領を確認する必要があります。応募を希望する企業は、指定の応募様式に必要事項を記入し、メールまたは郵送にて提出することが求められます。問い合わせは、物流政策課国際物流室にて対応しており、関係する担当者が対応にあたっています。
このプロジェクトは、物流企業にとっても重要な意味を持つものであり、近年増加する不測の事態に対する対策としての役割が期待されています。例えば、パンデミックや自然災害により従来の輸送ルートが機能しない場合、事業の継続を支えるためには、代替ルートや新たな輸送手段の確立が必要不可欠です。また、物流ルートの多様化により、特定の地域やルートへの依存を減らし、国際的なリスクを分散する効果が期待されています。物流業界では、地政学的な緊張が高まる中でサプライチェーンの強靱性を確保することが求められており、この調査がその一助となるでしょう。
さらに、実証輸送により得られるデータは、輸送コストの削減やリードタイムの短縮、手続きの簡素化といった現実的なビジネス価値も生み出します。これにより、物流の効率が向上し、企業にとってのコスト削減や運営効率化が期待できます。BCPの観点からも、このプロジェクトを通じてリスク評価が実施されるため、輸送ルートの選択肢を増やしつつ、特定ルートにおけるリスクの把握と管理が進むことでしょう。
今後、このような取り組みを通じて、日本企業がより安定的かつ柔軟な物流ネットワークを構築するための土台が整備されることが期待されています。日本国内外のサプライチェーンが強化されることで、国際的な物流網がより安定し、地政学リスクや経済情勢の変動に耐えうる構造が築かれるでしょう。これにより、物流業界全体が効率的かつ安全な運営を維持できるようになるとともに、国内産業全体にも大きな利益がもたらされることが見込まれます。
⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ