労務・人事ニュース

  • TOP
  • お知らせ
  • 労務・人事ニュース
  • 完全キャッシュレスバス導入、運転手負担31%減へ 全国210万人利用の実証結果

2025年5月8日

労務・人事ニュース

完全キャッシュレスバス導入、運転手負担31%減へ 全国210万人利用の実証結果

Sponsored by 求人ボックス

完全キャッシュレスバスの実証運行の報告書を公表しました!(国交省)

国土交通省は、令和7年4月25日、完全キャッシュレスバスの実証運行に関する報告書を公表しました。この取り組みは、バス業界が抱える深刻な運転者不足や経営悪化といった課題に対して、抜本的な対策を講じることを目的としています。特に、現金取扱いに伴う運転手の負担軽減と、バス事業者の経営効率化を狙いとし、キャッシュレス化による運行の安定性向上を目指すものです。

令和6年8月には、全国から18事業者29路線が実証運行対象として選定されました。選定基準には、利用者が限定的な空港・大学路線、観光需要が高い路線、日常利用者が多い生活路線、自動運転の社会実験も行う路線など、多様なケースが含まれました。これらの路線で令和6年11月から翌年2月にかけて実証運行が行われ、総利用者数は延べ約210万人に上りました。

実証運行の結果、現金利用率は平均で6ポイント低下し、運転者の負担が減ったと感じる回答は運行開始1か月後の18%から、3か月後には31%へと増加しました。特に現金確認に伴う乗客とのやり取りが減少したことが、運転手の業務負担軽減に寄与していることがわかりました。完全キャッシュレス化の効果は、単に業務効率化にとどまらず、乗客にとっても乗降時間の短縮や定時性向上といった利便性向上にもつながっています。

実証運行を通じて得られた知見からは、ネットメディアや事業者公式ホームページなどでの事前情報提供が、利用者の理解促進に非常に有効であることが明らかになりました。また、路線特性に応じた周知活動も効果的でした。例えば生活路線ではICカード販売を強化し、観光路線ではバス発着地点にスタッフを配置して利用案内を行うなど、柔軟な対応が行われました。

一方で、課題も明確になりました。特に、スマートフォンの電池切れや交通系ICカードの残高不足といった技術的なトラブルへの不安、災害時にキャッシュレス決済が利用できなくなるリスクへの懸念、子どもや高齢者がキャッシュレス端末を持たない問題などが利用者アンケートから浮かび上がりました。これらに対応するため、後払いカードの導入や券売機による現金チケット販売、交通系ICカードの無料配布といった施策が推奨されています。

さらに、広報活動の面でも重要なポイントが整理されました。バス停やバス車体へのポスター掲示、SNSやWebサイトによる情報発信、沿線施設との連携による周知など、多層的な広報が施策受容性を高める鍵であることが確認されました。特にネットメディアや事業者ホームページを通じた広報は、乗車前に施策情報を得られるため、利用者の理解促進に大きく寄与しました。

国際的な動向を見ても、完全キャッシュレスバスの導入は広がっています。ロンドンでは2014年から現金利用を廃止し、1億3000万ポンドのコスト削減を実現しました。ソウルでも完全キャッシュレスバスが25%を超える普及率に達し、運転手の負担軽減とサービス向上に成功しています。これらの事例に学びながら、日本でも利用者層に応じたきめ細かな対応が求められます。

今回の実証運行では、全体の50%の事業者が運行継続または本格運行への移行を決定し、約40%の事業者が新規路線での導入を検討しています。これにより、完全キャッシュレスバスの普及に向けた基盤が着実に整いつつあります。国土交通省は今後も、全国規模での完全キャッシュレスバス実装を目指し、利用者への周知徹底と社会受容性向上に向けた施策を強化する方針です。

2025年度にはさらに候補路線の公募・選定を行い、夏頃から利用者への周知活動を開始、9月以降に新たな実証運行をスタートさせる予定です。検証結果は2026年3月頃に公表され、全国展開に向けた更なる議論と施策検討が進められます。

深刻な運転者不足やバスネットワーク維持への懸念が高まる中で、完全キャッシュレスバスの導入は単なる利便性向上にとどまらず、日本全体の公共交通基盤を守るための重要な取り組みとなっています。今後、事業者、自治体、利用者が一体となって、より安全で効率的な公共交通の未来を築いていくことが求められます。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

パコラ通販ライフ