2024年9月22日
労務・人事ニュース
就農者の高齢化で経営困難に!2024年、米作農業の廃業数が過去最多に
帝国データバンク「「米作農業」の倒産・休廃業解散動向(2024年1-8月)」(2024年9月5日)
日本における米作農業の現状は、近年深刻な経営危機に直面しています。特に2024年1月から8月にかけて、米作農業における倒産件数や休廃業・解散の動向がこれまでにない規模で拡大しており、その背後には様々な要因が複雑に絡み合っています。株式会社帝国データバンクの調査によると、この期間に倒産した米作農業の事業者は6件、休廃業・解散が28件発生し、合わせて34件が市場から姿を消しました。これは前年通年の倒産・休廃業件数(35件)をすでに上回り、2024年には年間で40件台に達する可能性が高いとされています。
このような倒産や廃業の背後には、いくつかの重要な要因があります。まず第一に挙げられるのが、農業に必要な生産資材の価格上昇です。農林水産省のデータによれば、2023年における生産資材の価格は2020年平均と比較して1.2倍に上昇しています。特に肥料の価格は1.5倍に達し、燃料費や農薬などもそれぞれ1.2倍、1.1倍と増加しています。これらのコスト増加は、米作農業にとって大きな負担となり、経営を圧迫しています。一方で、国内の主食用米の消費量が減少しているため、販売価格へのコスト転嫁が難しい状況が続いています。結果として、利益がほとんど残らず、翌年の機材や苗床の準備費用を確保できずに経営を断念する農家が増加しているのです。
さらに、米作農業における後継者不足も深刻な問題です。特に小規模な米農家では、高齢化が進み、就農者が次第に減少している状況があります。次世代の担い手が不足していることから、経営の継続が困難となり、廃業を選択するケースが多く見られます。農業の魅力が若者に伝わりにくい現状が、この問題を一層悪化させています。
しかし、米作農業全体がすべて危機に直面しているわけではありません。一部の農家では、低農薬や無農薬米など高付加価値の米を生産することで、安定した収益を上げている例もあります。これらの農家は、消費者の健康志向の高まりを背景に、特定の市場で需要を伸ばしています。また、JA(全国農業協同組合中央会)を中心に、新規就農者を支援する取り組みが進められており、後継者不足に対する対策も徐々に進展しています。
ただし、資材コストの高騰や価格転嫁の難しさという根本的な課題が解決されない限り、米作農業全体の経営状況が大きく改善することは難しいと考えられます。特に、小規模農家が次々と廃業を余儀なくされる中で、日本国内の米の安定供給が危ぶまれる事態も予想されています。こうしたリスクを回避するためには、政府や関連機関がさらに積極的に支援策を講じ、持続可能な農業経営の実現を目指す必要があります。
このように、米作農業を取り巻く環境は急激に変化しており、経営者にとっては困難な時代が続いています。倒産や廃業の動きが顕著である中、これまで以上に効率的で持続可能な経営モデルが求められています。たとえば、農業の機械化やデジタル技術の導入によって、労働生産性を向上させる取り組みが注目されています。特に、AI(人工知能)を活用した農作業の効率化や、ドローンを使った精密農業は今後の米作農業の大きな成長エンジンとなり得ます。これにより、若者や新規就農者が興味を持ちやすくなり、後継者不足の問題も緩和される可能性があります。
また、消費者のニーズに対応するために、米の品種改良や販売チャネルの多様化も重要な戦略となっています。高品質で差別化された米の生産を行うことで、国内外の市場において競争力を維持することが可能です。たとえば、海外輸出を強化することや、インターネットを通じた直接販売の増加は、農家にとって新たな収益源となるでしょう。
一方で、米作農業の未来を見据える上で、地域コミュニティとの連携も不可欠です。特に地方における農村部の過疎化が進む中で、地域の活性化と連動した農業振興策が重要視されています。たとえば、都市部からの移住者を積極的に受け入れ、農業と観光を組み合わせた地域経済の発展を図る取り組みが行われています。こうした施策は、単なる米作農業の振興にとどまらず、地域全体の持続可能な発展にも寄与します。
最終的に、日本の米作農業が持続的に発展していくためには、農家自身の経営力強化だけでなく、政府や地域社会、消費者が一体となって支援することが不可欠です。農業における技術革新と消費者ニーズの変化に対応しながら、経営の多角化や効率化を進めることが、今後の成功のカギとなるでしょう。
⇒ 詳しくは帝国データバンクのWEBサイトへ