2024年11月5日
労務・人事ニュース
建設業の所定外労働時間8.7%減少!働き方改革が採用に与える影響
毎月勤労統計調査 令和6年8月分結果確報 第2表 月間実労働時間及び出勤日数(厚労省)
令和6年の8月における実労働時間に関する確報データによると、全産業を対象とした総実労働時間は132.2時間となり、前年と比較して1.1%の減少を記録しました。このうち、所定内労働時間は122.9時間で、前年から1.0%減少し、所定外労働時間に関しては9.3時間で、前年と比較してわずかに増加しています。これらの数字は、働き方改革や労働環境の変化を反映しており、特に長時間労働の抑制や労働生産性向上に向けた取り組みが進んでいることを示唆しています。
産業別にみると、鉱業や採石業などの分野では、実労働時間が152.4時間と他産業に比べて高く、前年から5.9%の大幅な減少が確認されています。所定内労働時間は140時間で、前年比2.6%の減少が見られますが、所定外労働時間は12.4時間で前年から3.1%減少しています。こうした数字は、重労働を伴う産業では依然として長時間労働が求められる場面がある一方で、徐々に労働時間の短縮が進んでいる現状を反映しています。企業にとっては、鉱業分野の人材確保が難しくなる可能性がある一方で、労働環境の改善が雇用の魅力を高める要因となるでしょう。
建設業においても、同様に労働時間の減少が見られます。実労働時間は151.4時間で、前年から2.3%の減少が確認されています。所定内労働時間は139.9時間で1.7%の減少、所定外労働時間は11.5時間で8.7%減少しました。特に所定外労働時間の大幅な減少は、建設業界における働き方改革の進展を示しており、残業の削減や効率的な業務遂行が重視されていることが伺えます。これにより、建設業界の労働環境は改善しつつあり、人材確保や定着の観点で企業にとって有利に働く可能性があります。
さらに、全産業の出勤日数は平均で17.1日となり、前年と比較して変動はありませんでした。しかし、鉱業では出勤日数が前年より0.4日減少し、18.7日となりました。この変化は、小規模な変動ではあるものの、労働日数の減少が実労働時間の減少にどのように影響しているかを示す興味深い指標です。また、建設業でも出勤日数は18.5日と前年より0.5日減少しており、こちらも労働時間短縮への動きが進んでいることが伺えます。出勤日数の減少は、労働者のワークライフバランスの向上を促進し、結果として企業の魅力向上や従業員の定着率向上につながる可能性が高まります。
これらのデータを基に、企業の採用活動において重要となるのは、労働時間や労働環境の変化にどう対応していくかです。例えば、長時間労働が求められる業界では、労働時間の短縮や柔軟な勤務形態の導入が急務となっています。これにより、従業員の満足度を向上させるだけでなく、離職率の低下や優秀な人材の確保につながる可能性があります。また、残業の削減に向けた取り組みが進んでいる業界では、効率的な業務遂行や生産性向上を強化し、これを企業の魅力としてアピールすることが採用成功の鍵となるでしょう。
一方で、実労働時間が高い業界や、所定外労働時間が依然として長い業界においては、労働環境の改善が急務となっています。特に、若い世代の労働者はワークライフバランスを重視する傾向が強いため、こうした業界では柔軟な働き方を提案することが人材確保のポイントとなります。テレワークの導入やフレックスタイム制の拡充といった施策は、今後の採用競争において大きな差別化要因となり得ます。
また、出勤日数に関するデータからは、業界ごとに異なる労働日数の管理が必要であることが分かります。鉱業や建設業のように、依然として出勤日数が多い業界では、今後の採用活動においてはワークライフバランスの改善をどのように進めていくかが焦点となります。出勤日数を減らしつつ、効率的な業務運営を実現するための具体的な施策を打ち出すことが、求職者に対して企業の魅力を高めるための重要なポイントとなるでしょう。
総じて、令和6年8月の労働時間に関するデータは、各産業における働き方の変化を反映しており、企業の採用戦略にも大きな影響を与えることが予想されます。企業が競争力を維持し、優秀な人材を確保するためには、労働時間の適正化や働き方の多様化に対する積極的な取り組みが必要不可欠です。
製造業の実労働時間は約145時間で全産業の中でも多い
製造業の実労働時間は全産業の中でもやや高く、特に所定内労働時間が長い傾向にあります。データによると、製造業の実労働時間は約145時間に達し、前年からの減少幅は小さいものの、所定外労働時間が依然として残る業界です。所定外労働時間が10時間を超えていることから、残業の負担が従業員に与える影響が大きく、これが離職率の上昇や採用の難しさに繋がっている可能性があります。製造業の企業が採用競争力を高めるためには、残業の削減や自動化を進めることが不可欠です。これにより、労働時間を削減し、従業員の仕事とプライベートのバランスを向上させることで、採用市場での競争力を強化できるでしょう。
次に、電気・ガス業界については、労働時間が他の業界に比べて安定している傾向があります。この業界の労働時間は約130時間で、所定内労働時間がほとんどを占め、所定外労働時間は少ないという特徴があります。このため、電気・ガス業界は比較的働きやすい環境にあると考えられますが、さらに採用力を高めるためには、キャリアパスやスキルアップの機会を強調することで、若い世代の関心を引きやすくなるでしょう。また、安定した労働環境が売りとなるため、長期的なキャリア形成を重視する求職者に対して積極的にアピールすることが効果的です。
情報通信業に関しては、労働時間が長く、特に所定外労働時間が他業界よりも多いことが問題となっています。この業界では、技術的な需要の急激な変化やプロジェクトベースの仕事が多いため、労働時間が不規則になりがちです。データによると、情報通信業の所定外労働時間は15時間を超えており、これは業界全体で見ても高い水準にあります。企業は、テクノロジーの進化に対応しつつ、従業員の負担を軽減するための対策を講じる必要があります。具体的には、プロジェクト管理の改善やテクノロジーを駆使した効率化を進め、従業員の負担を軽減することが求められます。これにより、長時間労働を抑制し、働きやすい環境を提供することで、優秀な人材の確保につなげることが可能です。
運輸業や郵便業においては、所定外労働時間が依然として高い水準にあり、特に長時間労働が常態化していることが課題です。この業界は、物流の需要が増加する一方で、人手不足が深刻化しており、その結果として一人当たりの労働時間が増加しています。データでは、運輸業の所定外労働時間が20時間を超えており、これは他業界と比べても極めて高い水準です。企業が人材確保を進めるためには、まずは労働時間の見直しが必要です。AIや自動化技術の導入によって業務の効率化を図り、労働時間の削減を進めることが今後の採用戦略において重要な要素となるでしょう。また、柔軟な勤務形態や休暇制度の導入も、求職者にとって魅力的な条件となります。
金融業・保険業では、実労働時間が比較的短く、所定外労働時間も少ないため、労働環境は安定しています。この業界は、労働時間よりも業務の質や専門性が重視される傾向にあります。金融業界の企業は、従業員に対するスキルアップやキャリア形成の機会を提供することで、優秀な人材を引き寄せることができます。特に、デジタル化が進む中で、ITスキルやデータ分析能力を持つ人材の需要が高まっているため、そうしたスキルを持つ求職者にアピールすることが重要です。働きやすい環境を提供しつつ、キャリアアップの機会を整備することで、長期的に企業に貢献できる人材を確保することが可能です。
不動産業や物品賃貸業では、労働時間がやや長く、特に営業職においては残業が多いことが特徴です。この業界は、顧客対応が多く、顧客のニーズに迅速に応えることが求められるため、労働時間が不規則になりやすい傾向にあります。所定外労働時間は約12時間で、他業界と比べても高い水準です。不動産業界での採用活動においては、ワークライフバランスを重視した取り組みが必要です。特に、営業職の労働時間管理を徹底し、効率的な業務運営を推進することで、労働環境の改善を図る必要があります。これにより、離職率を低下させ、優秀な営業人材の確保につなげることができます。
医療・福祉業界は、慢性的な人手不足により長時間労働が常態化している業界の一つです。特に、介護職や看護職においては、夜勤や不規則な勤務シフトが多く、労働者の負担が大きいことが課題となっています。データでは、医療・福祉業界の所定外労働時間が14時間を超えており、これは他のサービス業と比べても高い水準です。企業がこの問題に対処するためには、労働時間の短縮やシフト管理の改善が必要です。特に、夜勤の負担を軽減し、働きやすいシフトを導入することで、採用市場における競争力を高めることが可能です。また、従業員のメンタルヘルスケアや福利厚生の充実も、求職者に対する重要なアピールポイントとなります。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ